No.058 ブルース・スプリングスティーン/涙のサンダーロード (1975)

BORN TO RUN
≪オールタイム・グレイテスト・ソング 500≫ その58
Bruce Springsteen – Thunder Road

17歳の頃、そのなにもかもに憧れるほどに好きになったアーティストだった。

当時、今から思えば社会に出るのが少し早すぎたわたしは、まだ自分が何者でもなくて、何ができるのかもわからない、無限の可能性への希望と途方もない不安を同時に抱えて死にそうになっていた時だったので、その歌詞や、等身大の音楽に共感して熱くなっものだ。
スプリングスティーンのふりしぼるような声や、熱いけれど哀愁のあるサウンドに感情を揺さぶられずにはいられなかった。

わたしはこの曲を聴くと、今でも一瞬でその世界に入っていくことができる。少年のころに聴いていたときの熱い気持ちがよみがえってくる。
わたしが最も好きな曲のひとつだ。これと同じくらい好きな曲を探すのはなかなか難しい。

閉塞感漂う町の片隅に生きる孤独な若者が、けっして美人ではないけれどなによりも大切な彼女に「この街を出よう」と告げる歌だ。

彼は自由になるために、成功するためにギターだけを手にして、雷鳴が轟くような道のりを走り始める。

エンディングのクレモンズのサックスを聴きながら少年のわたしは、「ああ、成功したんだなあ」とこのレコードジャケットの、むさくるしい髭面だけどこの世の誰よりもカッコよく見えた男を、憧憬とともにじっと見つめていた。