【映画】『ELVIS エルヴィス』(2005 米)★★★★☆

ELVIS/エルヴィス [DVD]

【音楽映画の快楽】
Elvis

監督:ジェームズ・スティーヴン・サドウィズ
主演:ジョナサン・リースマイヤーズ

貧しい家庭で育ったエルヴィスの高校時代から1968年の復活ライヴまでを描いた3時間に及ぶ大作。劇場用映画ではなくTV用映画だが、クオリティに遜色はない。

エルヴィスのアーティストとしての軌跡と、プライヴェートの素顔や人物像を事実に基づいて描いている。伝記映画としては満点の作り方だ。

メンフィスのサン・レコードからデビューした後、トム・パーカー大佐に引き抜かれてRCAからメジャー・デビューし、一躍大スターになった幕開けから始まり、マザコン気味だったエルヴィスと母との関係、その後妻となる14歳のプリシラとの恋愛、2年間の兵役、そして後半は望まない映画出演や女優とのスキャンダル、ビートルズへの憎悪、薬物に依存し、宗教にハマり、浪費癖や隠遁生活などで壊れていく様子も描かれている。

物語を通して一番気になるのは、エルヴィスを売り出してスターにした、マネージャーのパーカー大佐の存在である。

エルヴィスは大佐の、作品の質を度外視した金もうけ至上主義に疑問を持ち、ときにはぶつかりながらも、最後には「イエス、サー」と従い、生涯彼と離れることはなかった。

たしかに当初のエルヴィスの望み通りに歌と映画で大スターにしたのは大佐の手腕だったが、質より量の映画出演や、大佐個人の事情で国外での公演をエルヴィスは生涯出来なかったこと、映画では描かれていないが、RCAの楽曲の権利をエルヴィスに無断で売って自分のギャンブルの借金の返済に充てたことをなどを考えると、エルヴィスのマネージャーに本当にふさわしい人物だったのかは疑問が残る。

ジョナサン・リースマイヤーズは上手くエルヴィスを演じている。ただし、歌うシーンはすべて実際のエルヴィスのレコードが使われている。ジョナサンは口パクで演じるので、やはり違和感は残る。

そう考えると『ウォーク・ザ・ライン』のホアキン・フェニックスや『ドアーズ』のヴァル・キルマーなど、自分で歌った俳優は大したものだと思えてくる。

現在、新たなエルヴィスの伝記映画の制作が進行中と聞く。
これは劇場映画で、監督が『ムーラン・ルージュ』のバズ・ラーマン、エルヴィス役にオースティン・バトラー、パーカー大佐役にトム・ハンクスというなかなかそそられるキャスティングだ。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする