【映画】『ジャージー・ボーイズ』(2014米) ★★★★★

ジャージー・ボーイズ [Blu-ray]

【音楽映画の快楽】
Jersey Boys

監督: クリント・イーストウッド
主演:ジョン・ロイド・ヤング

もう、素晴らしすぎる。

『ジャージー・ボーイズ』は、60年代に人気を博した米ニュー・ジャージー州出身のコーラス・グループ《フォー・シーズンズ》の伝記映画だ。

リード・ヴォーカルのフランキー・ヴァリのファルセットが特徴的なグループで、「シェリー」「悲しきラグ・ドール」など、5曲が全米1位に輝いた。

この作品はもともと、2005年からブロードウェイで上演されたミュージカルを映画化したものだ。
映画化に当たって監督をクリント・イーストウッドに打診したところ、もともと彼がフォー・シーズンズを好きだったこともあり、舞台を見て快諾したという。

イーストウッドは地元マフィアのボス役にクリストファー・ウォーケンを起用するなどした以外はほぼ舞台の俳優たちをそのまま使ったため、出演しているのは無名の俳優・女優たちがほとんどだ。それによってリアリティが生まれ、全員がまるで本人のように思えてくる。

グループ結成とブレイクまでの道程や名曲誕生の瞬間など、音楽的な興味がそそられる側面がしっかり描かれているうえに、グループの内紛や裏社会との深い関係など、栄光の裏側にある影の部分もしっかり描かれていて、音楽伝記映画として完璧で理想的な作品であり、ドラマとしても見ごたえ充分だ。

フォー・シーズンズのメンバー4人が、各々の視点から観客に向かって語りかけるスタイルも面白い。

『24アワー・パーティ・ピープル』の項でわたしは「主人公が観客に向かって事の次第を説明するスタイルの映画で、わたしはこの手法が苦手だ。この世で最もダサい手法と思っているぐらいだ」と書いたが、これを撤回させてほしい。
こんなに面白く、効果的な方法もあるとは知らなかった。

クリント・イーストウッドは、若い頃から、製作費をあまりかけずに素早く撮るという職人的な監督で、最近は熟練しまくって、すべての映像が美しく、テンポとリズムが良く、ドラマチックな期待感と緊張感、そして同時にユーモアとエンターテインメント性に溢れている。

先日アップした記事、チャーリー・パーカーの生涯を描いた『バード』から26年経過し、その間にイーストウッド監督はとてつもない熟練度を増したようだ。
高度な技術を会得した重要無形文化財の工芸品職人みたいに、きっと今の彼は目をつぶっていても傑作を撮るだろう。

80歳を超えてからも毎年1本のペースで精力的に撮り続け、現在89歳ながら、その作風は枯れることもなく、人生の喜怒哀楽と素晴らしいドラマを、われわれ人生の後輩たちに教えてくれる生き生きとした作品ばかりだ。

自身がピアノを演奏し、作曲もするほどの音楽通であるイーストウッド監督ならではの、音楽に対する深いリスペクトも感じられる。

正直、わたしはこの映画を見るまで、フォー・シーズンズというのはあまり好きじゃないグループのひとつだった。
「シェリー」などのヒット曲も、いつ聴いても気持ち悪いなあと思っていたのに、この映画を見て彼らのことを深く知るうちにいつのまにか好きになってしまった。
いつも思うけれど、音楽にしろなんにしろ「嫌い」だと思ってるものは、結局ただの無知だったり、理解不足だったりすることが多々あるものだ。

映画のエンディングは、出演者全員がストリートに集合してダンスを踊るという遊び心に驚かされる。舞台では定番のシーンだが、映画ではあまり見たことがない。
70歳のクリストファー・ウォーケンもキレのいい動きで踊っている。彼は元ダンサーなのだ。

当時84歳のイーストウッド監督による、意表を突く型破りなユーモアとエンターテインメントの、素晴らしいエンディングである。

コメント

  1. R-blues より:

    是非、観たくなりました。
    フォーシーズンズも、知らない訳ではない程度に知ってるし、なにしろイーストウッド映画❗。
    私も大好きなクリストファー・ウォーケン、イーストウッドも好きなのね。
    観なきゃ❗

    • ゴロー ゴロー より:

      フォー・シーズンズが好きでも好きじゃなくてもオススメしたい作品ですね。

      クリストファー・ウォーケンはマフィアの親分ですが、フランキーの声に惚れて涙し、街中の子分たちに「彼が歩いていたら道を開けろ。彼が転んだら助け起こせ」と指示する音楽好きの人情肌で、すげー良いです(笑)

      フォー・シーズンズのメンバーたちも、もともと泥棒をやってた不良少年たちで、そんな彼らとマフィアのズブズブの関係もユーモアを込めて描かれていたり、そういう意味では今の時代になかなか作りにくい(日本ならまず無理)、尖った作品という意味でも面白いと思います。