天才すぎたミクスチャーの元祖 〜ジーザス・ジョーンズ『リキダイザー』(1989)【最強ロック名盤500】#15

Liquidizer -Hq/Coloured- [Analog]

⭐️⭐️⭐️

【最強ロック名盤500】#15
Jesus Jones
“Liquidizer” (1989)

英ロンドン出身のバンド、ジーザス・ジョーンズが1989年10月に発表した1stアルバムだ。

アルバムタイトルの『リキダイザー (Liquidizer)』とは、ジャケットにも写っているように、ミキサーのことだ。
ロック、ポップス、テクノ、ダンス、ヒップホップといった、その時代にあった全部をミキサーにぶっ込んでミックスさせたような彼らの音楽性を、端的に表したものだろう。

当時はもうびっくらこいたものだ。いきなり20年ぐらい進化したロックが出現したような気がしたものだ。彼らの音楽はその後のデジタル・ロック、ミクスチャー・ロックの先駆けとなった。まあなにしろ画期的だった。われわれは熱狂した。

ただサウンドが新しいだけではなかった、何よりも高く評価すべきなのは、フロントマンのマイク・エドワーズの、ポップソングを書くソングライターとしての才能である。要するに目新しさだけでなく、元々の曲が良いのである。

「Never Enough」「What’s Going On」「Bring It on Down」「All the Answers」などの名曲がずらりと並ぶ。ただ、いかにもあの時代の音、あの時代のビートなので、今聴いてみると少々キツいところもあるかもしれないが、曲の良さは伝わると思う。

この1stアルバムで注目を浴び、2ndで大ブレイクし、遠くは日本の小室哲哉や布袋寅泰などもその影響を公言するほどだったが、しかしながら3rdで飽きられ、シーンから消えていく、、という当時の短命なロックバンドの典型的な栄枯盛衰を彼らも辿ってしまった。

マイク・エドワーズは音楽家として天才のうえにクレバーで顔まで良くて、まるで時代の寵児のような存在だったが、今も昔も、ロックで食っていくのはそんなすべてを兼ね備えたような天才ですら大変なのだ。

あのときジーザス・ジョーンズを聴いて、ロックの新しい時代が始まった! と昂奮した若者たちももうすっかりおじさんおばさんになってるはずだけど、みんな元気かな。わたしは元気です。あれから35年、お互い苦労をしながらも、なんとか生きてきましたねえ。

こんな曲を聴くとついつい当時のことや、過ぎた年月、そしてあの頃出会ったあいつらはどうしてるんだろう、などと思いを巡らせてしまうな。

(Goro)

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