一昨日発売された、ストーンズの『刺青の男（Tatoo You）』の40周年記念エディションのスーパー・デラックス版というのを聴いてみた。CD4枚組である。
ディスク1は1981年発表の『刺青の男』の2021年リマスター版。良くはなってると思うけれども、それほど劇的な音質の変化は感じない。
ディスク2は「ロスト＆ファウンド：レアリティーズ」というもので、当時録音されたものの、お蔵入りとなっていた9曲の未発表トラック。アウトテイクというものにあまり興味を惹かれないわたしだけれども、これは予想以上に良かった。本音を言うとわたしは『刺青の男』というアルバムが、ストーンズの中ではそんなに好きな方ではないので、何曲か入れ替えたほうが良かったのにと思ったほどだ。
今回オフィシャル・ビデオまで制作された「リヴィング・イン・ザ・ハート・オブ・ラヴ」はストーンズらしい力強いギター・リフとピアノがカッコいい勢いのあるナンバーだし、ジミー・リードのカバー「シェイム・シェイム・シェイム」は、チャーリーのスウィングするドラムもカッコよくて、これまで発表しなかったのがなんとももったいないと思うほど良い出来。ドビー・グレイの大ヒットソウルナンバー「ドリフト・アウェイ」のカバーももうちょっと推敲したらかなり良くなりそうだし、ジミー・ミラー時代みたいな熱いバラード・ナンバー「ファスト・トーキング・スロー・ウォーキング」もなかなか悪くない。
まあ統一感という意味では結果どうなったかわからないけれども、これらの曲が入っていたらわたしはもっと『刺青の男』が好きだったかもしれないと思うほどだ。
そしてディスク3と4が、1982年発表のライヴ盤『スティル・ライフ』と同じ時期の、英ロンドンのウェンブリー・スタジアムでのライヴ全25曲を収録している。
本家『スティル・ライフ』の厳選されたトラックとは段違いの、だいぶ粗い演奏だけど、やっぱりリアルなライヴ演奏はこれぐらいだよなあと、なんだかほっこりもするし、ちょっと応援しながら聴いてしまう。
オープニングの「アンダー・マイ・サム」の、録音のせいなのか演奏のせいなのかわからないえらくショボいスタートにいきなりズッコけるものの、しかし曲が進むにつれ徐々に調子を上げて行く。チャーリーのドラムの疾走感といったらないし、キースのギターもかなりささくれだっていていい感じだ。
あと、当時わたしの「コーラス」というものの概念を変えたと言っても過言ではないほどの、キースとロニーによるがなり立てるようなワイルドなコーラスの、かなりリアルに荒っぽいやつが聴けるのもたまらない。
ライヴの収録曲は以下の通り。
1. Under My Thumb
2. When The Whip Comes Down
3. Let’s Spend The Night Together
4. Shattered
5. Neighbours
6. Black Limousine
7. Just My Imagination
8. Twenty Flight Rock
9. Going To A Go Go
10. Chantilly Lace
11. Let Me Go
12. Time Is On My Side
13. Beast Of Burden
14. Let It Bleed
15. You Can’t Always Get What You Want
16. Little T&A
17. Tumbling Dice
18. She’s So Cold
19. Hang Fire
20. Miss You
21. Honky Tonk Women
22. Brown Sugar
23. Start Me Up
24. Jumpin’ Jack Flash
25. (I Can’t Get No) Satisfaction
映画『レッツ・スペンド・ザ・ナイト・トゥゲザー』とほとんど同じ選曲だけど、映画にはあった「友を待つ」「オール・ダウン・ザ・ライン」が入っていなくて、替わりに「ホエン・ジ・ウィップ・カムズ・ダウン」と、なんとビッグ・ボッパー（バディ・ホリー、リッチー・ヴァレンスと共に飛行機事故で亡くなったロックンローラー）のカバー「シャンティリィ・レイス」が入っているのがちょっと嬉しい。
この4CDセットには他にピクチャー・ディスクのLPと124ページの豪華ブックレットも付いているらしいが、価格はなんと、20,350円（税込）である。
この値段を知ってしまうとそうそう人に薦められるものではない。
わたしにはとても買えないし、サブスクでなければ一生聴く機会もなかっただろう。
↓ 「ロスト＆ファウンド：レアリティーズ」収録の「リヴィング・イン・ザ・ハート・オブ・ラヴ」
↓ ジミー・リードのカバー「シェイム・シェイム・シェイム」