名盤100選 81 シェリル・クロウ『ザ・ヴェリー・ベスト・オブ・シェリル・クロウ』(2003)

ザ・ヴェリー・ベスト・オブ・シェリル・クロウ

年を取ってからだんだん女の良さがわかってきた。
いや女性アーティストのことだけど。
前回は80年代を象徴する女性アーティストのひとり、シンディ・ローパーを選んだけど、今回は90年代を代表する女性アーティスト、シェリル・クロウを選んでみた。

90年代の後半に、大ブレイク中のシェリル・クロウを聴いたときは、なんだか懐かしい感じを受けたものだ。
90年代ロックはそれこそ殺伐とした、ギターの音量を極端に大きくして極端に歪ませたサウンドであったり、あるいは打ち込みのグルーヴであったり、レディオヘッドのように、もはや完全にロックの原形をとどめない、骨だけのバラバラ死体のような「音楽」だったりしたのだ。

でもシェリル・クロウにはそんな極端さはどこにもない。
昔ながらのカントリーをベースにしたややロック寄りの「ポップソング」を、昔ながらのスタイルで、ごく自然に歌っているだけだ。
それがわたしには逆に新鮮だった。
まるで、SMの女王様や、薬漬けのジャンキー女や、着飾ったブランド女や、スキンヘッドで舌にピアスをしたパンク女や、ノイローゼのようなエキセントリックな女や、そんな極端な女たちと付き合ってきた後に、どこにでもいる普通の働くOLに出会ってその素朴さに心を打たれ、恋に落ちたかのようだった。
まあ、そんな経験はないのだけど。

わたしには新鮮に聴こえたかもしれないけど、しかしカントリーをベースにしたポップスを歌う女性アーティストなんていうのはいつの時代でも、アメリカン・ポップスの王道として存在している。

ヘンなロックに夢中になっていたわたしの耳には入って来なかっただけで、メインストリームでいつの時代でも多数派の人々に親しまれている音楽というのは実はそんなに大きく変化しない。
周縁のオルタナティヴな音楽のほうこそが実は時代によって極端に変化し、流行りすたりが激しかったりするのだ。ついつい逆だと思ってしまいがちなのだけど。

そして年をとって、欲求不満も自然解消していき、過剰に刺激を求めなくなってくると、ベーシックな音楽の心地よさやリアリティに心が響くようになる。
シェリル・クロウの音楽もわたしにとってはそのような種類のものだ。ちなみにわたしのいちばん好きな歌は”If It Makes You Happy”である。

シェリル・クロウは31歳でデビューした。ミュージシャンとしては遅咲きの印象であるが、カントリーのアーティストのデビューとしてならそれぐらいでもふつうである。

このベスト盤のジャケはまあフツーだけど、2~4枚目のアルバムジャケットは一度見たら忘れられないようなカッコ良さだった。
特に『グローヴ・セッションズ』は、挑戦的でタフなポーズと匂い立つようにセクシュアルなビジュアルが共存していて、ロック史上最強の女性アーティストと思わせるに充分な写真であった。
わたしが食いついたのも、もしかするとこのジャケのせいだったかもしれない。

過去にはエリック・クラプトンやオーウェン・ウィルソンと浮名を流し、自転車選手と婚約するも破断、乳癌の手術を経て、現在も48歳で独身、養子をとり、現在3歳ということだ。

ロックミュージシャンだからと言って、やたらと男勝りなポーズで女性的な要素を払拭しようとするような女性アーティストがわたしは好きではない。女性としてのリアリティに欠け、なにを歌っても説得力がないからだ。

シェリル・クロウは芯の強いしっかりした女性のイメージだが、それでいて声は若さを残していて、ちょっと可愛らしいところもある。意外にセクシーな衣装を着て女を強調したりと、女性的な見た目にもこだわっているらしいところも好感が持てるのだ。
女の良さがだんだんわかってきたわたしが太鼓判を押す、本当のイイ女である。

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コメント

  1. funnyface より:

    遂に
    きましたね。シェリル・クロウ。

    私は女性アーティストは殆どと言っても過言ではない程、聴きません。
    が、唯一、彼女のCDだけは買ってしまいます。
    (昔のは相方のを借りてますが…)

    何と言っても声がイイ!
    可愛らしさを残しつつ、それでいて力強さを感じる。
    あんな声で歌えたら、さぞかし気持ちよかろう。
    勿論、サウンド楽曲も好きですがね。

    好きな曲は沢山あるので、もう一度、あらためてコメントしますわ。