【瑞々しく可憐な68歳】ドリー・パートン/くよくよするなよ(2014)

BLUE SMOKE

【カバーの快楽】
Dolly Parton – Don’t Think Twice

原曲は、ボブ・ディランの2ndアルバム『フリーホイーリン・ボブ・ディラン』に収録されている、彼の最初期の代表曲だ。

これをカバーしたドリー・パートンは、1946年生まれのシンガー・ソングライター。ちょうどパティ・スミスと同い年だ。日本人で言うと、中尾ミエや木の実ナナ、美川憲一と同い年である。つまり、大ベテランである。

1960年代にデビューした彼女は多くのヒット曲を残しているが、たぶん日本人に最もよく知られているのは、ホイットニー・ヒューストンが『ボディガード』で歌った「オールウェイズ・ラヴ・ユー」だろう。あれを作詞・作曲したのがこのドリー・パートンだ。知らなかったでしょう。

彼女はカントリーやポップスを主に歌う歌手だが、これが実に可愛らしい声で歌う。
このカバーは、彼女の2014年のアルバム『ブルー・スモーク(Blue Smoke)』に収録されている。アルバムは全米6位、全英2位となり、なんと彼女の長いキャリアの中でも、チャート最高位を記録した大ヒットアルバムとなった。

ドリー・パートンはこのとき68歳ということになる。とてもとても信じられないほど、可憐で瑞々しい声だ。そのうえ力強い。人間離れしている、という言い方はどうかと思うけれども、そう思ってしまう。

アコースティック楽器だけのクラシック・カントリー風のアレンジだ。派手な飾り付けなど一切ないのに、仕上がりはポップである。ヒットソングっていうのはこうやって作るのよ、というお手本みたいに思えるほど見事な出来だ。きっと彼女そのものがポップの権化でもあり、同時に職人的な音楽家でもあるのだろう。

多くのカバーがある曲だが、圧倒的にチャーミングで、楽しく、わかりやすく、完成度が高い。

このカバーを聴いてから、あらためてこの曲が好きになった。

↓ ボブ・ディランのオリジナル。