フリー『ファイアー・アンド・ウォーター』(1970)【食わず嫌いロック】#6

FIRE & WATER

Free
“Fire and Water” (1970)

フリーの『ファイアー・アンド・ウォーター』を聴いてみる。

と言っても初めというわけでもない。シングル・ヒットした「オールライト・ナウ」は好きだったし、なにしろジャケがカッコいいので、レンタルで借りて聴いたことがある。わたしはレンタルの会社に長いこと勤めていたので、レンタルしてPCに取り込み、1度だけ聴いた、というものがたくさんある。

そのときは、やけに地味なアルバムだなあという印象だった。「オールライト・ナウ」みたいな曲が並んでいるのかと思ったら、全然違ったのだ。逆に「オールライト・ナウ」だけが妙に浮いてるような印象だった。

しかしあらためて聴いてみると、地味と一言でわたしが片付けたのはいかにも浅かった気がする。

1曲目の「ファイアー・アンド・ウォーター」からいきなり超カッコいい。

その後はスローテンポの曲が多めだが、ギターは煩いほどにはでしゃばらないけれどもここぞというときにはよく歌うし、ドラムも必要以上にガシャガシャしないし、ベースも存在感は強めだが静かに機会を窺う感じだ。ブルース・ロックにしては暑苦しさがなく、抑制の効いた、滋味深いサウンドだ。

平均年齢20才という若さの割に、全然はしゃがず、哀愁さえ感じてしまう。
「リメンバー」の間奏のギターソロなどを聴いているとそんな少年のような年齢のギタリストが弾いていることを忘れて、いいオッサンが思わず聴き惚れてしまう。
かと思うと「ミスター・ビッグ」の間奏のように大人びたギターと奔放なベースが競い合うように熱くなり、高いところへと駆け上がっていくような若々しい瞬間もちゃんとある。

60年代のカビの生えたようなブルース・ロックとはすでに全然別のものになっているし、70年代ハード・ロックの萌芽を聴くこともできる。時代の転換点で揺れながら、新しい響きが生まれている感じだ。

まあ、簡単に言えば、なんともクールなアルバムだ。
秋の夜長などに、まったりと聴きたい。

(Goro)