80歳のストーンズの「怒り」の新曲【ストーンズの60年を聴き倒す】#78

Angry

「アングリー」(2023)

Angry (2023)

The Rolling Stones

すごいな。80歳だよ。

まさか今年80歳というミックとキースのストーンズが、本当にニュー・アルバムを出すなんて思ってもみなかった。

いや、もう何年も前から「ストーンズが新曲をレコーディング中」なんていうニュースは飽きるほど聴いたけれども、ベスト盤にオマケとして入れることはあっても、正直、オリジナル・アルバムとしてまとまるなんてことは信じていなかったのだ。

あの怪物たちはもはや「80歳でロックはさすがに無理」という人類の共通認識すら超越してしまった。

ストーンズのニュー・アルバム『ハックニー・ダイアモンズ (Hackney Diamonds)』が10月20日に発売されることが発表された。『ア・ビガー・バン』以来、18年ぶりのオリジナル・アルバムだ。
アルバムからシングル・カットされる予定の「アングリー」のミュージック・ビデオが先行公開されている。

わたしがその昔想像した、老境に入ったストーンズが安楽椅子に腰掛けてアコギでゆったりと奏でる渋いブルースなんかではなく、現役感100%の、パワフルなリフが牽引する力強いロックナンバーだ。

チャーリー・ワッツがこの世を去って初めての新曲ということになるけれども、ドラマーは最近のツアーでもサポートメンバーとして参加している、スティーヴ・ジョーダンだ。晩年の闘病中にチャーリー自らが、自分になにかあったらと推薦したのが彼だった。
ベースのダリル・ジョーンズとの黒人リズム隊コンビはズッシリとした重量感と強靭なグルーヴを生み出している。

いつだって最先端じゃないと気が済まないミックのヴォーカルには例によって今風のエフェクトがかけてあるし、半分最新のサウンドで、半分やっぱり昔ながらのストーンズという印象だ。間奏のキースの通り魔的ギターソロはやっぱりいつものように鋭くブルージーだ。

ミックはこのアルバムのテーマを「怒りと嫌悪」だと語っている。

そうか。やっぱり怒りのエネルギーは人がいつまでもビンビンでいられる秘訣なのかもしれない。
歳をとると人はいろんなことを諦めていくものだ。「そういうもんさ」と。そうして老いと死に抵抗する気持ちも徐々に諦め、死を受け入れるのである。スラムダンクの名台詞、「あきらめたらそこで試合終了」というのはそういう意味でもあったか。

諦めないなあ、ストーンズは。まるで自分たちが歳をとっていることに気づいてもいないかのようだ。なんだかあらためて、そんなジジイになりたくなってきた。
わたしが中学の頃に、俳優の上原謙(加山雄三のお父さん)が71歳で35歳年下の再婚相手を妊娠させたときに「あんなジジイになりたい」と思ったものだが、それ以来のことである。

MVにはストーンズのイメージにぴったりなエロくてバカっぽいお姉ちゃんと、若き日のストーンズの映像が使われ、シビれるほどカッコいい出来だ。

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コメント

  1. 中村守之 より:

    ストーンズ新作
    一字一句アイアグリーです❣
    御氏の年齢的に、今のロック界のレジェンドとして現存するバンドへのGo Buck的な再発見再確認食わず嫌いの検証の投稿
    大変興味深く拝見しております。当方
    ジミ・ヘン、クリームのHR元祖リアタイの音楽好き組です。

    • Goro より:

      コメントありがとうございます!
      ジミヘンやクリームのリアルタイム世代ですか!うらやましい、大先輩ですね。
      わたしはリアルタイムの彼らも、そのときの空気や評価も知らず、ズレたことを書いてることもあるかと思いますので恥ずかしい限りです。

      しかし、ストーンズ新作に共感していただけたことは、世代を超えて共感出来る部分もあるのかと、嬉しく思うと同時に、多少なりとも自信に繋がりました。
      ありがとうございました。