グランジ・オブ・ゴッドファーザー 〜ニール・ヤング&クレイジー・ホース『傷だらけの栄光』(1990)【最強ロック名盤500】#21

Ragged Glory

⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

【最強ロック名盤500】#21
Neil Young & Crazy Horse
“Ragged Groly” (1990)

80年代は所属レーベルと対立し、作風も迷走を極めたニール・ヤングだったが、古巣のリプリーズ・レコードに戻ると89年に名曲「ロッキン・イン・ザ・フリー・ワールド」を発表し、再び覚醒した。そして1990年9月、クレイジー・ホースとの本作『傷だらけの栄光』で遂に完全復活を果たした。

翌年のニルヴァーナの大ブレイクをきっかけに米国のオルタナティヴ・ロックが若者を中心に支持され、その歪んだ轟音ギターにシンプルな歌メロという、ロックの原点に還るようなパワフルなギター・ロックは、「グランジ(薄汚いの意)」と呼ばれ、続々とフォロワーを輩出し、大きな盛り上がりを見せた。

ニールとクレイジー・ホースにとって本作は、21年前の1969年に発表したアルバム『ニール・ヤング・ウィズ・クレイジー・ホース(Everybody Knows This Is Nowhere)』以来、より激しさを増した以外はほとんど変わらないスタイルだったが、ダイナソーJr.やソニック・ユースなどの若いアーティストたちが絶賛し、ニール・ヤングは当時「グランジ・オブ・ゴッドファーザー」と呼ばれ、その復活を歓迎されたものだった。

「グランジ」という言葉は当時、音楽のことだけでなく、そのファッションのことも指した。
ロックスターらしくない、Tシャツにネルシャツ、ダメージ・ジーンズにスニーカーという飾り気のないファッションを指したが、それもまた、1969年以来、ニール・ヤングとクレイジー・ホースの30年以上も変わらないファッションそのものでもあった。

この『傷だらけの栄光』は、ニール・ヤングの膨大なディスコグラフィの中でも5本の指に入る名盤だ。

全10曲のすべてが、思わず口ずさんでしまう「歌」に溢れ、指先から血が飛び散りそうな、情念が迸るギター、暗い雲が過ぎ去った後に射し込む陽光のような明るい曲想、一発録りのリアルで生き生きとした、自由で豪快なロックだ。

当時のわたしは、探し求めていたロックをここに見つけた気がしたものだ。

90年代のロックは面白くなりそうだなあ、とワクワクしたことをよく憶えている。

(Goro)

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