名盤100選 30 ボブ・マーリィ&ザ・ウェイラーズ『カヤ』(1978)

カヤ

これまでこのブログで、どのアルバムを選ぶべきかで特に悩んだアーティストはローリング・ストーンズ、ニール・ヤング、レディオヘッドだった。
1枚に絞るというのが困難で、悩んだ結果選んだものが今となってはどれも失敗だったように思える。
ローリング・ストーンズは『ベガーズ・バンケット』にすべきだったような気がするし、ニール・ヤングはやはり順当に『アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ』だったかもしれない。レディオヘッドもこのあいだ『OKコンピューター』を聴き返して、うわあやっぱりこっちだったかなあなどと思ったものだ。

もうそんなに悩むアーティストもいないだろうと思っていたのだが、まだいた。
ボブ・マーリィである。
この人のアルバムはもう、全部が名盤と言いたくなる。
ここまで書いた時点でもまだどれにするか決まっていない。
これを書きながらファーストの『キャッチ・ア・ファイアー』を聴いているが、だいぶ心がこのアルバムに傾きかけている。この強いベース、不穏な空気がたまらない。ここにはクスリとも笑わないテロリストのようなボブ・マーリィがいる。
でもまだあと3枚聴いて決めるつもりなのだ。

わたしがボブ・マーリィを初めて聴いたのはわりと早くて、16歳の頃だった。
まだローリング・ストーンズもパンクも聴いたことのない頃だった。
わたしは当時豊田の駅裏にあった「ピック・アップ」という貸レコード店で『サヴァイヴァル』という78年のアルバムを借りた。前にも書いたが、わたしはどのアルバムをどこで買ったか、借りたかということをいちいち覚えているのである。ただし、なんでそれを借りたのかは全然覚えていない。

ボブ・マーリィはジャマイカのレゲエ・ミュージシャンである。
父は英国の白人で、母がジャマイカの黒人という混血である。
ボブ・マーリィの「レゲエ」という音楽は特にイギリスのロック・ミュージシャンに衝撃を与え、エリック・クラプトンがカバーした「アイ・ショット・ザ・シェリフ」で世界にその名を知らしめた。
70年代後半のイギリスのロック・ミュージシャンたちのレゲエに対する傾倒、入れ込み方は、まるでブルース以来の新たな音楽の発見であるかのようだった。
レゲエは基本的に「REBEL MUSIC」であることから、パンクロックのミュージシャンたちも共感し、クラッシュのようにパンクからレゲエに移行するバンドも多かった。

ボブ・マーリィは政治闘争にも係わり、1976年には狙撃されて重傷を負い、亡命することとなった。ジャマイカの2大政党が対立を激化し、抗争を繰り広げていた頃の話だ。
3年後にボブ・マーリィはジャマイカに戻り、”ワン・ラヴ・ピース・コンサート”を開く。このときコンサートを見に来ていたジャマイカの2大政党の両党首をステージに上げ、和解の握手をさせている。
この頃になるとボブ・マーリィは音楽界のみにとどまらず広く世界的に影響を与える、生きる伝説のようなカリスマ的存在だった。
そして1981年、脳腫瘍を患い、36歳で死んだ。

わたしがボブ・マーリィにハマっていた頃、これ以上の音楽はないだろうと思っていたものだ。ボブ・マーリィの音楽にはそんな魔力がある。ハマりかたが半端ではなくなるのだ。
ボブ・マーリィを神格視する人も多く、ついでにラスタファリズムにまで傾倒する人も多いが、本当ははそういう人もボブ・マーリィの音楽が好きで好きでたまらないだけなのである。
好きな人の真似をしたいだけのことである。わたしはラスタファリズムには興味はないが、ボブ・マーリィの音楽は好きで好きでたまらない。

と書いてるあいだに、はや4枚目のアルバムを聴き、結局1978年の『カヤ』を選ぶことに決めた。
このアルバムはファーストとは対照的にカリブの陽光が照りつけるような明るさに満ち、いつもの攻撃性よりも人生の充実感を謳いあげるような、エネルギーに満ちた名盤である。
ポップソングとしての完成度も高い、本当に良い曲ばかりだ。
ジャケもボブ・マーリィのアルバムの中で唯一の、輝くような笑顔の写真である。

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コメント

  1. まーこ より:

    こんな私でも・・
    ピックアップ☆懐かしぃねぇ~
    お世話になりましたょ♪

    レゲエは基本的に聴かなぃと、言うか・・聴けなぃに等しいんだけど、ボブだけは別格!!!
    ボブの音は重くて優しぃので、レゲエ候じゃなく私でも気持ち良く聴けます。

    確か、ロックンロールを演ってるアルバムもあったょね!?
    某美容室で聴かせてもらって「こぅいぅ事もやってたんだ!!」・・と、ビックリしました。

    胃癌で他界したと思ってました。。
    当時のアルバムジャケットって、ポッと笑顔の写真が載るからグッときますね。
    ジャニスの笑顔のジャケットも大好きデス♪