テンプテーションズ/パパ・ワズ・ア・ローリング・ストーン(1972)

オール・ディレクションズ

【モータウン・ポップスの快楽】
Papa Was a Rollin’ Stone

songwriters : Norman Whitfield, Barrett Strong

60年代半ばにヒット曲を連発したテンプスだったが、さらに凄いのはその後だ。

時代と共に新しい音楽が次々と生まれ、ロック、サイケデリック、ニュー・ソウル、ファンク、ディスコと、めまぐるしく音楽の流行が変化すれば、それらを貪欲に取り入れ、果敢にチャレンジして様々なスタイルのアルバムやヒット曲を残した。彼らの音楽性の変化はそのまま時代の変化を見ているようで実にに興味深いものがある。

この「パパ・ワズ・ア・ローリング・ストーン」は、「マイ・ガール」の頃のスタイルとはテーマもサウンドもガラリと変わった、社会派意識高い系のニュー・ソウルの影響がみられる刺激的な名曲だ。

若くして死んだ父親があまりに近所の評判が悪いことを気にし、母親に「パパはどんな人だったの?」と息子が訊くという歌詞である。

パパは生涯定職に就かず、詐欺師のように人から金をまきあげ、借金にまみれ、女と酒に溺れ、転がる石のような人生だった、と母親はありのままを説明する。

そして、彼が帽子を置いた場所が我が家になり、母と息子に残したのは孤独だけだ、と嘆く。

何者にもなれず、妻と息子にもなにも残してやれずに死んでいった、どこにでもいるろくでなしの男について歌った、考えさせられる歌詞だ。

ニュー・ソウルやファンクの影響の濃いアレンジがまた衝撃的なカッコ良さで、全米1位の大ヒットとなった。