グレン・ハンサード/アストラル・ウィークス(2012)

【カバーの快楽】
Glen Hansard – Astral Weeks

今回はちょっと、マニアックな回になってしまって申し訳ないけれども。

この、グレン・ハンサードというアーティスト、名前だけ言われてもピンとくる人は少ないだろうけど、アイルランドのダブリン出身で、1991年にザ・フレイムズというバンドでデビューしている。

その同じ年にアラン・パーカー監督の映画『ザ・コミットメンツ』にギタリストの「アウトスパン」役で出演し、世界中で知られるようになった。映画は日本でも大ヒットした。

その後はバンド活動、ソロ活動、そして俳優業もしながら、アルバムを出せばアイルランドではトップ10入りするほど、現在も人気アーティストとして知られ、活躍しているようだ。

わたしは彼の音楽を聴いたことはなかったけれど、ヴァン・モリソンの「アストラル・ウィークス」のカバーという、無謀としか思えないような選曲の動画を見つけて、興味を惹かれたのだった。
そのときはまさかコミットメンツのギタリストだとはまったく知らず、後で調べて知って、驚いたのだった。

「アストラル・ウィークス」は、ヴァン・モリソンの楽曲の中でも特に前衛的な、もはやロックとも言えないような、しかし得も言われぬ美しさを持ち合わせた、唯一無比の名品だ。

そう簡単にカバーなどできる代物ではないと思うが、ここではアコギとサックスだけでカバーしている。

いや、なかなかの衝撃だ。
凄いな、アウトスパン。

もちろん完コピではないが、ちゃんと「アストラル・ウィークス」の魂が息づいている。

ヴァン・モリソンが乗り移るほどに、彼のことを心の底からリスペクトし、大きな影響を受けてきたのだろう。

バンドの楽しさを教えてもらったコミットメンツから30年、今度は「アストラル・ウィークス」で観客をこんなに楽しませることができることを、新たに教わった。ありがとう、アウトスパン、いや、グレン・ハンサード。

ちなみに、彼のトレードマークにもなっているこの穴のあいたボロボロのギターは、タカミネNP15なのだそうだ。

↓ ヴァン・モリソンのオリジナル。

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