名盤100選 71 R.E.M.『エポニマス』(1988)

エポニマス

一聴しただけではピンとこない音楽というものがあるもので、このR.E.M.こそがわたしにとってはその代表的なものだった。

今はもうしんどいのでやらなくなったが、わたしが音楽を聴きあさった若いころには、毎月まとめてCDを買って、それをとにかく順番に聴いて10周するということをかならずやったものだった。

たとえば5枚CDを買ってくると、好きなアーティストの最新アルバムもあれば、前から聴いてみたかったアーティストのベスト盤もあり、音楽雑誌でチェックした新人アーティストや、ブレイク中のアーティストの話題のアルバムなんかもあったりする。そういうものをまとめてオーディオラックの上に積んで順に聴いていく。
たとえ一聴してものすごく気に入ったCDがあったとしても、そればかり繰り返し聴くことは決してしない。逆に、あまりピンと来ないCDでも同じように、10回は我慢してでも聴く。
そういう聴きかたをすることによって、一聴して気に入ったと思ったCDでも10回聴くころには飽きてしまったり、逆にはじめはピンと来なかったけど10回も聴くうちにじわりじわりとその良さがわかってきたりという経験をしながら、真の愛聴盤を見つけていったものだ。

R.E.M.をはじめて聴いたときは、ちっとも良いと思わなかった。
ラウドでもなければ、メロディがとくに印象的なわけでもなく、あまり刺激的ではない軽めのサウンドで、派手でもなければダークでもない、はたまたシブいというほどでもなく、ヴォーカルの声に少し特徴があること意外は、可もなく不可もなくといった感じだった。

それでもわたしは、その後も何度も繰り返し聴いた。
すると次第に、この軽めのシンプルなサウンド、シンプルなメロディがなによりも心地よく思えてきたのだ。

ラウドな音楽やクセが強い音楽を聴くのがしんどいとき、「ごく普通のロック」が聴きたいときにはちょうど良かった。
「ごく普通のロック」が聴きたいと思ったときにぴったりの音楽って、実は意外となかったりする。
だから、何年か経ってみると、かなりの頻度で聴く愛聴盤になっていった。

R.E.M.は、ザ・バーズ以来綿々と続いてきた真の王道アメリカン・ロックの継承者だ。
このアルバムは、彼らが1988年にインディーズからメジャーに移ったときに、それまでの集大成として出されたベスト・アルバムである。R.E.M.の世界的な快進撃はこの直後から始まる。
これ以降の時代のベスト盤としては『イン・タイム~ザ・ベスト・オブR.E.M.1988-2003』があり、メジャーに移ってからのヒット曲が網羅されていて入門者にはおすすめだ。

でもわたしはこの『エポニマス』を愛する。
久しぶりに聴いてみたら、やっぱりすごく良い。昔聴いてた頃よりも、今のほうがもっと良く聴こえる。
聴いてなかったアルバムも含めて、もう一度まとめて聴いてみようと思った。

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