AC/DC/バック・イン・ブラック(1980)

AC/DC - BACK IN BLACK

【80年代ロックの快楽】
AC/DC – Back In Black

「世界で最も売れたアルバム」を調べてみると、調査の仕方や調査年度によって多少ばらつきはあるものの、1位がマイケル・ジャクソンの『スリラー』で1億1千万枚、2位がAC/DCの『バック・イン・ブラック』で5千数百万枚、3位がピンク・フロイド『狂気』で4千数百万枚、というところだ。


それにしても凄い。

ビートルズやエルヴィスほど有名でもなく、決して万人向けでもなく、商業主義的でもない、そんなロックバンドのアルバムが、ロック史上最も売れたのである。

しかもAC/DCは、ビートルズが評論家に賞賛されたように、アルバムごとにスタイルを変化させ、進化させていくのとは真逆の、自分たちのスタイルを伝統芸能のように守り続けて世界中のリスナーに支持されたというのがまた痛快である。

ローリング・ストーン誌が選んだ〈「100 Greatest Artists of All Time(史上最も偉大な100組のアーティスト)」で、AC/DCは第72位に選ばれているが、いくらなんでも低すぎやしないか。


アンガス・ヤングのギターが堅牢なAC/DCスタイルを創出し、ブライアン・ジョンソンの獣のような雄叫びが空を切り裂くこの曲は、余分なものをすべて剥ぎ取ったかのような、シンプルでクールなハード・ロックだ。
思わず「原始人がやりそうなハード・ロック」と言いそうになるのを、我慢している。

80年代はデュラン・デュランやウルトラヴォックスのようなシンセサイザーサウンドが特徴的なニューウェイヴ・ロックだけでなく、一方でこんなゴリゴリのハード・ロックやヘヴィ・メタルも商業的に大成功した。
さらにはパンクの落ち武者みたいな連中から発展した、インディーズ・シーンもアンダーグラウンドで活性化し、90年代のオルタナティヴ・ロックの土壌を作っていったのだ。

まさにその意味で、80年代のロックシーンは百花繚乱の時代だったと言えるだろう。

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