ブームタウン・ラッツ/哀愁のマンデイ(1979)

哀愁のマンデイ

【アイリッシュ・ロックの快楽】#2
Boomtown Rats – I Don’t Like Mondays

ブームタウン・ラッツは1977年にデビューしたアイルランドのバンドだ。 

この曲は彼らの3rdアルバム『哀愁のマンデイ』に収録され、全英1位となったシングルだ。 

この曲は、1979年1月に米カリフォルニア州サンディエゴで起こった衝撃的な惨劇について歌われている。 

1月29日の月曜日、16歳の少女ブレンダ・アン・スペンサーが、自宅の向かいにある小学校に向けてライフル銃を乱射し、6時間に及ぶ犯行により、校長と主任用務員が死亡、子供たち8名と警官1名が負傷するという凄惨極まりない事件が起こった。 

ブレンダはその動機を「理由なんてないけど、面白かったから。月曜日が嫌いなの(I Don’t Like Mondays)」と語り、その言葉をこの曲のタイトルとしている。 

「理由なんてわからない、理由なんてないんだから」と繰り返し歌われる。
きっとそうなのだろう。
小学生たちを、ライフル銃で狙って殺しまくる理由なんて存在するわけがないのだ。 

少女が使ったライフル銃は狩猟用のもので、誕生日に州立大学の学長を務める父親からプレゼントされたものだった。
素晴らしい地位をもつ裕福な家庭の父親は、素晴らしい家庭に育った娘がまさか銃で小学生を撃つとは夢にも思わなかったに違いない。 

今から40年前に起きた事件で、その後も度々アメリカで悲劇的な銃乱射事件が繰り返されているが、一向に銃の規制を進めようとしないのは、アメリカの根深い病理のようにも思える。 

銃による殺戮で原住民を制圧して大陸を征服し、アフリカから連れてきた奴隷を銃による恐怖で従わせ、富と地位を築いてきた白人にとって、銃は白人支配による自由主義社会を成立させるための根源的なパワーであり、アイデンティティでもあるのだろう。 

われわれ日本人は、そんなもの規制したらいいのにと簡単に思うのだけれど、アメリカ人にとって銃を手放すということは、国家の礎を引っこ抜かれ、すべてのシステムがガラガラと崩れ落ちて、反乱と復讐の恐怖に晒されるようなものなのかもしれない。 

ただし、銃が規制されている日本でも、また別の手段で無差別殺人は何度も起こっている。
そしてもちろん、そのほとんどの動機には、納得のいく理由など何もない。 

そもそも肉塊と水気のものだけで出来たこの動く物体が、ものを考えたりペチャクチャ喋ったりしていることが奇跡のようなものだ。
悲しむべきことであり、そして恐るべきことであるが、ときどきこの肉塊と水気の物で出来た動いて喋って感情を持つモノは、やはりときどき壊れてしまうものらしいのだ。 

防ぐ方法は無いのだろう。 

ブレンダは終身刑となり、現在56才で今も服役中だ。 

記事を書いた人(Goro)

愛知県在住。中学卒業後、無知蒙昧のまま社会にさ迷い出て、底辺職を転々した後、地元の映画館に拾われる。映画館に10年勤めた後、レンタルビデオチェーンのバイヤーを20年勤め、現在は再び底辺職で肉体労働の日々に返り咲く。心に平安が訪れている。生活に不満はなし。音楽にはいろいろと救われている。「映画は映画館で観なきゃダメ派」ではない。

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