No.460 ボブ・ディラン/ハリケーン (1975)

DESIRE
≪オールタイム・グレイテスト・ソング 500≫ その460
Bob Dylan – Hurricane

“ハリケーン”とは、ニュージャージー州出身の黒人ボクサー、ルービン・”ハリケーン”・カーターのことで、1961年にデビューして40戦で27勝、世界チャンピオンを敗ったこともある実力の持ち主だった。

しかし1966年、ニュージャージーの酒場に突然現れた2人組が銃を乱射して4人を殺傷し、逃走した事件の容疑者として彼は逮捕された。
彼が犯人とされたのは目撃者の曖昧な証言のみで、凶器も発見されていなかったが、裁判で有罪を言い渡され、終身刑となった。

彼は獄中で書いた自伝を出版し、事件の冤罪を訴えた。

陪審員は全員白人で、公平な審判が行われたとは言い難かった。
彼が黒人であることや、11歳の時に盗みで少年院に入っていることなどが偏見を助長して冤罪を生んだ事件として、公民権運動とも結びついて注目されることになった。
そしてボブ・ディランもカーターの書いた本を読んで事件に興味を持ち、自ら取材して、この曲を書いた。

その後、支援者たちの尽力で、検察がカーターに有利な証拠を隠蔽していたこと、証人が偽証していたことなどが判明し、1988年、カーターは20年ぶりに自由の身となった。

彼の半生と事件の経緯は1999年公開の米映画『ザ・ハリケーン』で描かれ、デンゼル・ワシントンがカーターを演じている。
もちろんボブ・ディランのこの曲を、映画の主題歌として使用している。

70年代のディラン作品の中でも最高傑作といえる名曲のひとつだろう。
全キャリアを通しても、これほどディランが前のめりでロックしている曲は多くない。ディランの想いの強さが伝わってくるようだ。「ライク・ア・ローリング・ストーン」よりもっと激しく、「見張り塔からずっと」よりもっと熱い。

フィドルをメインに据えたアレンジがまたカッコいい。

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