【映画】『わが愛の譜(うた)滝廉太郎物語』(1993日) ★★★☆☆

わが愛の譜 滝廉太郎物語 [DVD]

【音楽映画の快楽】
『わが愛の譜(うた)滝廉太郎物語』

監督:澤井信一郎
主演:風間トオル、鷲尾いさ子

日本人で初めて唱歌やピアノ曲を作曲し、23歳で夭逝した、滝廉太郎の生涯を描いた物語。

滝廉太郎(風間トオル)が15歳で東京音楽大学(日本初の音楽教育機関)に入学し、初めてピアノという楽器に出会うところから映画は始まり、結核を病みながらも日夜ピアノの練習に没頭し、作曲するという、超ストイックな生活が描かれる。

彼の代表曲「荒城の月」や「春」「箱根八里」「お正月」などは、外国の歌の翻訳ではない、日本初のオリジナルの唱歌だった。
何れも大学在学中の、21歳のときに書い曲だ。
彼が書いた作品は高く評価され、すぐに全国の小・中学校や幼稚園で歌われることになる。

時代は20世紀が始まったばかりの1901年(明治34年)、当然レコードも演奏会もなく、日本人が初めて西洋音楽を本格的に学び始めた時代である。
日本人で初めてヨーロッパへ音楽留学へ行ったのが、ピアニストの幸田延、2人目がその妹で滝と一緒にピアノの練習をしたユキ(鷲尾いさ子)、そして3人目が滝だった。

滝とユキはお互いに仄かな恋心を抱き続けたものの、どちらも想いを伝えることなく、滝が23歳の若さで病死し、永遠の別れとなる。

わたしのような現代のケダモノには、彼らはストイックすぎて、美しいけど、哀しすぎる。

それにしても、日本にまだオリジナルの楽曲もない、そんな時代にすでに圧倒的な進化と完成度を誇ったヨーロッパ音楽の凄さをあらためて思い知らされる映画でもある。
彼らはその怪物みたいなヨーロッパ文明に果敢に立ち向かったのだ。

当時のヨーロッパ音楽(今で言うクラシック音楽)の演奏シーンがたっぷり出てくるのもこの映画の楽しみでもあるけれど、風間トオルも鷲尾いさ子もピアノの経験があるのかないのか知らないけれど、リストやらシューマンやらショパンやら、とんでもない難曲を弾くシーンが何度も出てくる。手だけ別人の別撮り、みたいなごまかしもせずに、俳優たちが必死になって弾いているのがよくわかる(音は吹き替えだけど)。

特に鷲尾いさ子は、ベートーヴェンの「熱情」なんてものを結構長々と弾くシーンがあって、凄まじいけど、ちょっと可哀そうになったほどだ。

いや、それにしても、偶然だけれども、イアン・カーティス、滝廉太郎と、23歳で死んだ音楽伝記映画を連続で見てしまったなあ。

なんだろう、いったい。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする