【映画】『イングランド・イズ・マイン~モリッシー, はじまりの物語』(2017英) ★★★★★

イングランド・イズ・マイン モリッシー,はじまりの物語(字幕版)

【音楽映画の快楽】
England Is Mine

監督:マーク・ギル
主演:ジャック・ロウデン

【※ネタバレあり】

ザ・スミスのモリッシーの悩める青春時代、ジョニー・マーと出会うまでの物語だ。

わたしは、内向的で、人見知りで、引きこもりの、暗いやつが好きだ。

モリッシーもそのタイプだったのは知っていたので、どれほどのもんだろうと興味津々で見たのだけれど、期待を上回るディープな引きこもり野郎で、嬉しくなってしまった。

わたしも本ばかり読んで、音楽ばかり聴いて、人付き合いが苦手な人見知りの内向的な若者だったけれど、少なくとも働いてはいたし、女の子と付き合ったりもしていた。

でもモリッシーはまともに働きもしないし、なんとか就職しても、毎日遅刻するわ、簡単な仕事も出来ないわ、仕事中にサボって姿を消すわ、そしてクビになるわで、ひどいものだ。挙句には職安で希望の業種に「歌手」と書いて、呆れられる。

そんな状態でも、自分はまだ発掘されていない天才で、自分以外の人間はすべてバカだと信じて疑わない。
イタいイタいイタい。イタすぎる。
まあ、それは若い頃のわたしも似たようなものだったので、よーくわかるけれども。

でもまあそんなイタい自分を貫いたやつが結局、80年代の英国ロックを代表する、ロックスターになるのだ。

なにがどうなるかなんて、ホント、わからないものだ。

モリッシーは、世界中の引きこもりたちに夢と希望を与えた、引きこもり界最高の出世頭だ。

たとえ世界から無視され、蔑まれ、不用の烙印を押されようとも、引きこもりが世界に向けて抗い、唾を吐き、心の叫びを表現すること、それがザ・スミスの音楽の本質でもあると思う。

映画のラストシーンはそんなモリッシーが、友人の紹介でたまたま知り合った、音楽の趣味で意気投合した若者、ジョニー・マーの家に自ら出向いてインターホンを鳴らすところで終わる。

引きこもり野郎が初めて心を開ける相手を見つけた、感動的なラストシーンだ。

続編作ってくれないかなぁ。