ジェフ・ベック&ロッド・スチュワート/ピープル・ゲット・レディ(1985)

フラッシュ

【カバーの快楽】
Jeff Beck, Rod Stewart – People Get Ready

ジェフ・ベックの1985年のアルバム『フラッシュ』からのシングル。
ヴォーカルを務めたのは、その15年前にジェフ・ベック・グループのヴォーカリストだった、盟友ロッド・スチュワートだ。

PVはそんな古い友が久しぶりに再会するというストーリー仕立てになっているようで、演技ではないと思って見ればなかなか感動的である。

「ピープル・ゲット・レディ」は1965年にカーティス・メイフィールドが、当時盛り上がっていた公民権運動(人種差別撤廃を求める運動)に影響を受けて書いたゴスペル風の曲だ。当時カーティスがリーダーを務めていたグループ、インプレッションズが歌い、米R&Bチャート3位のヒットとなった。

みんな、準備はいいかい?
列車がやってくる
でも切符も荷物もいらない
信じる心があればいいんだ
神に感謝しよう

それに乗り込むすべての人に希望がある
この世に災いをもたらすやつらには席はない
彼らを哀れんでやろう
神の前では逃げも隠れも出来ないんだ
(written by Curtis Mayfield)

シンプルだからこそ一度聴いたら忘れられないメロディであり、時代が変わり、人類が新たな一歩を踏み出し、歴史が動いていく、そんな感動的な場面にふさわしい、気高く、美しい曲だ。

この曲が生まれてから、すでに55年が経った。

世の中も変わり、人々の考え方もずいぶん変わったが、しかし残念ながら現在に至っても人種問題はくすぶり続け、いつ暴発してもおかしくない火種として残っている。先日の、黒人男性ジョージ・フロイドが警察官によって窒息死させられた事件に端を発して、全米で起こったデモや抗議行動などが報じられた通りだ。

平和的な抗議行動の一方で、混乱に乗じて暴行や破壊、略奪へとエスカレートしていく行動も報じられた。さらにはそれを利用して犯罪集団が跋扈し、さらには反体制活動家や他国の工作員が暴動を煽り、誘導している動きもあったと報道されている。こうなるともはや人種問題は関係ない。

あの一連の混乱を思いながら「ピープル・ゲット・レディ」を聴くと、ただただ虚しい気持ちになるだけだ。
人を思いやる気持ちをすべての人が共有すれば簡単に解決できる話だ。自分さえ良ければよくて、他人に敬意を払うことができない人がいる限り、そこには対立が生まれるのは必至だ。

肌の色がどうであれ、この世に災いをもたらすやつらには席はなく、神の前では逃げも隠れも出来ないというのに。