≪オールタイム・グレイテスト・ソング 500≫ その6
Johnny Cash – I Walk the Line
今はもうこの世にはいない、カントリー界のレジェンドだが、わたしにとっては、カントリーとパンクの中間にいるような人だ。
ジョニー・キャッシュとクラッシュが共演したら絵になっただろうなあ。
もちろんそのステージは刑務所内の特設ステージだろうけど。
「アイ・ウォーク・ザ・ライン」は彼の伝記映画(素晴らしい映画)のタイトルにもなった代表曲で、わたしもこの曲を聴いてジョニー・キャッシュを好きになった。
ギターとベースだけのシンプルなサウンドのカッコ良さと独特の低い声に、異様に力強い説得力を感じ、そしてどこかアウトロー的な魅力も感じた。
「きみのためにおれは真面目に生きるんだ」というような大意のラブ・ソングだけど、ジョニー・キャッシュはその後、ありとあらゆるクスリを試して薬物中毒となり、麻薬の不法所持で逮捕されたり、花を摘むために他人の敷地に不法侵入して逮捕されたり、交通事故を起こして逮捕されたり、国有林を火事にして山を3つと絶滅寸前のコンドルの残り53羽のうち49羽を焼いて政府から訴えられたりと、数々の悪行を重ねた。
なかなか歌のようにはいかないものだ。
彼はアメリカ人なら誰もが知っているほどの有名アーティストだったけど、その音楽からは、ロックスターのようにも天才的なミュージシャンのようにもカッコいいアーティストのようにもわたしには思えない。
アメリカ合衆国に住みながら、金持ちの家に生まれることもなく、特別な才能に恵まれることもなく、アメリカンドリームなどとは縁もゆかりもない人生を、地方の町で閉塞感に生気を奪われながら暮らしている大多数の人々と同じ目線で、その人生の辛苦やささやかな喜びを歌う、ただの「歌うたい」のようだ。
だからこそ、心からリスペクトしてしまう。