ニルヴァーナ/スメルズ・ライク・ティーン・スピリット (1991)【’90s Rock Masterpiece】

Nirvana - Smells Like Teen Spirit

Nirvana
Smells Like Teen Spirit (1991)

1991年は楽しかったなあ。

ソニック・ユースが『GOO』でメジャーデビューの扉を開いてから、さらにピクシーズやダイナソーJrやマッドハニーやスマッシング・パンプキンズなどが続々と地下の世界から地上へとのたくり出てきた。中でも出世頭はこのニルヴァーナだった。

彼らの音楽はユーモアと殺伐と轟音ギターとポップなメロディが融合し、まるで当時のわたしがロックに対して望むすべてのものが揃っているかのようだった。

80年代を席巻したMTV向きに着飾った派手なロックスターたちや、ニューウェーヴを引きずった、冷蔵庫みたいに冷たい感触しかしないロックにうんざりしていた反動もあった。

音楽業界やメディアではそんな彼らの音楽を「また別の、異質な」という意味で「オルタナティヴ・ロック」と呼んでいたけれども、わたしには「こっちのほうがフツーのロックだし」と思えた。

わたしは熱に浮かされたようにニルヴァーナとオルタナティヴ・ロックを貪り聴いた。
この頃がわたしが最もロックにのめりこんだ時代だ。

一撃でロックの流れを変えたという意味で「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」は、セックス・ピストルズの「アナーキー・イン・ザ・UK」以来の爆弾シングルだった。

この曲は、全米6位という信じ難い大ヒットになった。あまりにも痛快すぎて、大笑いだった。おいおい、時代が変わっちゃったよ、と涙が出るほど笑った。

もともとオルタナティヴ・ロックなんてものはその完成度の低さも看板のひとつのようなものだったけど、その完成度を高めてピカピカに磨いてヒットチャートに送り込めたら面白いじゃないか、というのがカート・コバーンの狙いだったという。そしてプロデューサーのブッチ・ヴィグの手腕が見事にそれを実現させた。インディ・ロックの殻を破り、突き抜けた、鮮烈で刺激的で破壊力抜群のサウンドだった。

そのあたりもピストルズの『勝手にしやがれ』の大成功の要因が、プロデューサーのクリス・トーマスのサウンドづくりによるものが大きいと言われるのと似ている。

そういえばアルバムのタイトルも『Nevermind』と『Never Mind the Bollocks』で、キンタマ(Bollocks)がついてるかついていないかの違いだけだ。

カートが当時付き合っていたビキニ・キルというガールズ・バンドのヴォーカリストが使っていたデオドラントが「Teen Spirit」という商品名で(現在も販売されている)、メンバーから「カートはティーン・スピリットの匂いがする」とからかわれたことから、このタイトルを思いついたと言われている。

Teen Spirit 制汗デオドラントスティック、ピンククラッシュ1.40オズ(3パック) 3パック

タイトルにも意味はないし、歌詞にもまったく意味はない。202
なのに「hello, hello, hello, how low(ハロー、どんだけ最低?)」は、時代の気分をリアルに捉えたフレーズとしてわれわれの魂に共鳴したのだ。

※当記事は2016年12月に公開された記事をもとに大幅に加筆・修正したものです。

(Goro)

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