シュガー/ヘルプレス(1992)

Copper Blue (Deluxe Edition)

【90年代ロックの快楽】
Sugar – Helpless

シュガーは、「ウェーディンベ~~ル、からかわないでよォ、ウェーディンベ~エ~ル」のあのシュガーではなくて、元ハスカー・ドゥのフロントマン、ボブ・モールドが1992年に結成したバンドだ。
「ヘルプレス」というのもあのクロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤングの名曲「ヘルプレス」のカバーではなくて、オリジナルである。
いろいろとややこしい。

1979年にミネソタ州で結成されたハードコア・パンク・バンド、ハスカー・ドゥはインディーズ・レーベルに6枚のアルバムを残して、メジャーになることなく87年に解散してしまったが、その後続々と出てきたニルヴァーナなどのグランジ系バンドが最も影響を受けた元祖グランジ神バンドとして、再評価されることになった。

そのハスカー・ドゥのフロントマンだったボブ・モールドが92年に結成したのがこのシュガーで、グランジ・ブームの真っただ中「ついに御大登場!」と歓迎されたものだった。

しかしハスカー・ドゥのハードコア・テイストは影を潜め、わかりやすい歌メロとわりと聴きやすい轟音ギターという、当時流行のグランジに寄せて行った感のあるアルバムは全英10位(この頃のオルタナ系バンドはアメリカよりイギリスで注目された)を記録するなど好評をもって迎えられた。

わたしはハスカー・ドゥはもちろん評価はしているのだけど、ちょっとわたしには激辛が過ぎる。
わたしは台湾ラーメンが好きで、いつも行く店では2辛を頼むのだけど、ハスカー・ドゥは4辛ぐらいで、ちょっと辛すぎるのだ。
逆にこのシュガーは1辛ぐらいなので、ちょっと辛さが物足りないとも実は思っているが、このぐらいがちょうど良いと思う人ももちろんいるだろう。

シュガーはその後94年に2ndアルバムを発表し、これも全英3位とよく売れたが、96年にベーシストが「家族との時間を大切にしたい」という理由で脱退し、解散に至る。
いやいやロックバンドだろ、とツッコミたくもなるが、拘束時間が長くてサービス残業の多いブラック企業に嫌気がさして辞める会社員のような気持ちだったのかもしれない。