テレヴィジョン/フリクション(1977)

Marquee Moon [12 inch Analog]

【パンク・ロックの快楽】
Television – Friction

この曲は彼らの1stアルバム『マーキー・ムーン』に収録されている。

ロックの名盤は数多くあるけれど、「衝撃的な名盤」ということなら筆頭に挙げたくなる、冷たい狂気に魅了される危険なアルバムだ。
なんだか、完全に狂ってる人がすごくちゃんとした物腰で、完璧な演奏をしているような、そんな物凄さを感じるからかもしれない。

わたしは英語が少々苦手なので、その文学的な歌詞というのはとりあえず置いとくとしても、金属的な響きのエコーに包まれた硬質で冷たい2本のギターが絡み合うダークでエロティックなサウンドと、トム・ヴァーレインの断末魔のような痙攣する声によるキャッチーなメロディがわたしの脳下垂体をプルプルと震わせた。

この「フリクション」はイントロからしてなにか、日常の裂け目から非日常がゼリー状になって吹きこぼれてくるようだし、相当インパクトのあるヴォーカルにも聴き惚れるけど、結局はギターの印象のほうが強く残る。
パンク・ロックとしてはめずらしいタイプだけれど、テレヴィジョンの主役は2本のギターなのだ。

frictionというのは「摩擦」とか「軋轢」みたいな意味らしいが、「おれはおまえに摩擦を与える」というとエロいことも想像できるし、「君たちに軋轢を与えよう」と取ればまた猟奇的な異常性が顔をのぞかせる。

どっちにしろ、目の据わったヤバいヤツの仕業が、この世のものではないあの世のもののような声とギターで歌われる、永遠の衝撃作である。