Fairytale of New York
英国生まれのアイルランド人であるシェイン・マガウアン(ヴォーカル)を中心としたロンドンのケルティック・パンク・バンド、ザ・ポーグスの、全英2位となった大ヒット曲。
舞台はニューヨーク。
クリスマス・イヴの夜に泥酔して留置場に入れられたアイルランド移民の彼は、留置場の先客、年老いた男がアイルランド民謡を口ずさむのを聞き、自分の未来に彼を重ね合わせ、おれの人生はこんなはずじゃなかった、もっと違う誰かみたいになれたはずだった、と嘆く。
そして彼の妻は、女優になる夢を胸に抱き、彼を信じて一緒にニューヨークへやってきた昔を思い出しながら、実はただのろくでなしのクズだった彼に夢を奪われたと嘆く。
ニューヨークへ成功を夢見てやってきたアイルランド移民の夫婦が、夢も叶わないまま年を重ね、冴えない現実をお互いのせいにして罵り合う、クリスマス・ソングにしてはえらく物悲しい歌だ。
実際は、彼は彼女が女優になることに夢を託し、彼女は彼の言葉だけを信じてその気になっていただけのことだった。お互いが相手に夢を託しているだけで、自分ではなにもできなかったんだ、と歌う。
ヴォーカルのシェインと、ゲスト参加の女性シンガー、カースティ・マッコールが夫婦を演じて歌い、「ヤク中」だの「ホモ野郎」だの「ヤリマン」だの「ウジ虫」だのと、かなり際どい下品な言葉で罵り合うところもある。
大都会の最下層で生きる人々のリアルな言葉と想いが共感を呼んで大ヒットしたのだろう。せつないけれど、なんだかじんわりと沁みる歌だ。
夢が叶う人というのはきっと、夢を叶える才能を持っているのだろうな。
夢なんて、普通は叶わないものだ。
でも、死ぬまでずっと「こんなはずじゃなかった」と思いながら生きるのは、なんだかつまらない。
夢が叶わなかったのは、きっと見る夢を間違ったのだ。
ちゃんと運命の導きの通りに、自分ができることをするために生きて、自分にいちばん合った生き方をしているのだ、と思うことにしよう。