パルプ/コモン・ピープル(1995)

Different Class [12 inch Analog]

【ブリット・ポップの快楽】
Pulp – Common People

オアシス、ブラーに次いでブリット・ポップの顔となったのがこのパルプだった。

パルプは1983年にインディーズからデビューしているが、ようやくメジャー・デビューしたのが1993年という超遅咲きだった。

そしてブリット・ポップ・ムーヴメントの真っただ中だった1995年にこの「コモン・ピープル」が全英2位の大ヒットとなり、アルバム『コモン・ピープル(Different Class)』も全英1位に輝いた。

「コモン・ピープル」は、ヴォーカリストのジャーヴィス・コッカーが学生時代に出会った、裕福な家庭のお嬢様であるギリシャ人女性との経験を歌った曲だ。

彼女は貧しい「庶民(Common People)」たちの暮らしに憧れていた。庶民たちの質素な生活やささやかな遊びを真似して楽しみ、貧乏な男と付き合い、学校に行かずに仕事を探して、不自由な暮らしをカッコいいと思っていた。

そんな彼女に対して、彼は「でも、ただ毎日生きてるだけで、そこに意味もなければ、どうにかなりようもないし、どこかへ行くあてもない、そんな人生を送る気持ちは、おまえには絶対にわからない。突然人生が破滅することだってあるんだ。おまえには絶対起こらないけど。でもそんなやつらだって生きていて、ときには輝いて見えるから不思議なもんだろ?」と歌う。

こんなリアルな歌詞が80年代風なキラキラしたサウンドと、ジャーヴィスの下手クソだけど熱いヴォーカルで届けられ、すべての「庶民」リスナーたちの共感と熱狂的な支持を得たのだった。

しかしジャーヴィス・コッカーは、この予想を超える反応、周囲の賞賛と過度な期待に圧し潰されるようにして、アルコールやドラッグに溺れてしまう。
あえてファンの期待を裏切るような重くて暗いシングルを発表するなど、バンドは迷走をはじめ、メンバーも離れて行った。

3年後にようやく発表されたアルバム『ディス・イズ・ハードコア』も、全英1位を記録したものの、その暗い内容に評価は低く、セールスも伸びなかった。そして、それはそのままブリット・ポップ終焉の象徴ともなった。

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