ザ・バンド【名曲ベストテン】THE BAND Greatest 10 Songs

ザ・バンド+7

若い頃にザ・バンドを聴いたとき、このバンドには当時のわたしがロックに求めた、疾走感、刺激的なサウンド、若々しい情熱、といった要素がすべて欠けている、と思ったものだ。全員じいさんなのかと思ったぐらいだった。

そんな音楽を好んで聴くようになったのだから、わたしも年を取ったということだろう。最近は、若い頃は全然食べなかった漬物なんかも好んで食べるようになった。もうそろそろ死ぬのかもしれない。

冗談はともかく、ロックはスピードと若々しさだけではない。侘び寂びを味わうロックだってあったっていいのだ。ロックの可能性は無限だ。

ザ・バンドは、ドラムのリヴォン・ヘルムだけがアメリカ人で、あとの4人はカナダ人だ。
彼らはリヴォン・ヘルムをガイドにして、アメリカのルーツ・ミュージックに魅せられ、学びにやってきた異国の旅人たちだったのかもしれない。
その国の伝統文化の素晴らしさに気づくのは、意外と外国人の感性だったりするのは、テレビ東京の、日本の伝統文化を愛する外国人たちが出てくる番組などでよく見るとおりだ。

しかし彼らはただのおのぼりさんではなく、腕も確かで志も高いミュージシャンだった。
あらためて初期のアルバムを聴けば、単にジジ臭いだけではなく、斬新で実験的であり、前人未到の境地に踏み込んで行くような緊張感がある。
そして心に沁みる歌と、フィドルやアコーディオン、ピッコロなど、ノスタルジックな響きの楽器が織りなす美しいサウンドがある。

以下は、わたしが愛するザ・バンドの至極の名曲ベストテンです。

第10位 怒りの涙(1968)
Tears of Rage

1stアルバム『ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク(Music from Big Pink)』のオープニング・トラック。

ボブ・ディランとリチャード・マニュエルの共作で、リード・ヴォーカルもマニュエル。このドローッとした感じのスタイルが衝撃的だった。
まさに眼から血の涙を流しながら怒り悶えているような凄絶な歌だ。

第9位 ザ・シェイプ・アイム・イン(1970)
The Shape I’m In

3rd『ステージ・フライト』収録曲で、このアルバムでは最も人気の高い曲のひとつ。ロビー・ロバートソン作で、リード・ヴォーカルはリチャード・マニュエル。

リヴォン・ヘルムによればこの曲は「絶望」について歌われているそうだけど、あまりそんな感じはしない、ベースが強い、ファンキーな曲だ。

第8位 クリプル・クリーク(1969)
Up on Cripple Creek

2ndアルバム『ザ・バンド』収録曲。ロビー・ロバートソン作で、リード・ヴォーカルはリヴォン・ヘルム。

歌詞はルイジアナに向かうトラック運転手の視点で書かれている。南部の土の匂いと暑く湿った空気が立ち込めるような曲だ。

ワウペダルで演奏されたクラビネットの響きが印象的で、ニューオーリーンズ風のグルーヴとゴリゴリとしたファンキーなサウンドが独特で面白い。

第7位 チェスト・フィーヴァー(1968)
Chest Fever

1st『ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク』収録曲。ロビー・ロバートソン作で、リード・ヴォーカルはリチャード・マニュエル。

作者のロバートソンによれば、ジャムセッションから生まれた曲で、タイトルも特に意味なく付けたものなのだそうだ。「あの曲に歌詞があったかどうかも覚えていない。歌詞もオケもアレンジもなにひとつとして意味はないんだ」と語った、超テキトーな曲らしい。たしかに練られた感じはまったくしないけど、そのラフ感じがまたカッコいい。

「チェスト・フィーヴァー」の過去記事はこちら

第6位 傑作をかく時(1971)
When I Paint My Masterpiece

4thアルバム『カフーツ(Cahoots)』収録曲。ボブ・ディラン作で、リード・ヴォーカルはリヴォン・ヘルム。

1970年代の音楽とは思えないほどノスタルジックな響きと空気感の楽曲だが、演奏はシャープで現代的だ。

第5位 ザ・ナイト・ゼイ・ドローヴ・オールド・ディキシー・ダウン(1969)
The Night They Drove Old Dixie Down

ロビー・ロバートソン作で、リード・ヴォーカルはリヴォン・ヘルム。歌詞は南北戦争時代の最後の日々の物語で、貧しい南部の白人の苦難を歌っている。

この曲は1971年にジョーン・バエズがカバーして全米3位の大ヒットとなったが、リヴォン・ヘルムはこのカバー・バージョンが大嫌いだったという。

「ザ・ナイト・ゼイ・ドローヴ・オールド・ディキシー・ダウン」の過去記事はこちら

第4位 アケイディアの流木(1975)
Acadian Driftwood

6枚目のスタジオ・アルバム『南十字星(Northern Lights – Southern Cross)』収録曲。ロビー・ロバートソン作で、ヴォーカルはマニュエル、ヘルム、ダンコ。

全体的には素朴でノスタルジックなザ・バンドらしいサウンドだけれど、豊かな「歌」と素晴らしいフィドルによって完成度の高い、忘れられない名曲になっている。

「アケイディアの流木」の過去記事はこちら

第3位 アイ・シャル・ビー・リリースト(1968)
I Shall Be Released

1st『ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク』収録曲。ボブ・ディラン作で、リード・ヴォーカルはリチャード・マニュエル。

多くのアーティストがカバーし、日本でも当時の学生運動や反体制フォークの理念や世界観と歌詞がリンクして特に人気を集め、日本語詞のカバーも多く存在する、ザ・バンドの代表曲。

曲だけなら間違いなく1位なのだけれど、ファルセットのヴォーカルがわたしはあまり好みではないので順位を少し下げてしまった。ごめんね、リチャード。

「RCサクセション他/アイ・シャル・ビー・リリースト」の過去記事はこちら

第2位 同じことさ(1975)
It Makes No Difference

7枚目のアルバム『南十字星』収録曲。ロビー・ロバートソン作で、リード・ヴォーカルはリック・ダンコ。彼のせつない感じのヴォーカルが美しいメロディによく合ってる。

「同じことさ」の過去記事はこちら

第1位 ザ・ウェイト(1968)
The Weight

1st『ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク』収録曲で、ザ・バンドにとって最初のシングルでもあった。

ロビー・ロバートソン作で、リード・ヴォーカルはヘルムとダンコ。時代の変節を象徴したアメリカン・ニュー・シネマの名作『イージー・ライダー』で使用された曲だ。美しい夕陽を浴びて2台のバイクが疾走するシーンによく合っていた。

聖書にまつわる単語が頻出し、難解な印象を与える歌詞で、様々な解釈がされたが、作者のロバートソンは「みんな考えすぎたよ。この曲に深い意味なんてない」と語っている。

「ザ・ウェイト」の過去記事はこちら

選んだ10曲がぶっ続けで聴けるプレイリストを作成しましたので、ご利用ください。

【プレイリスト】ザ・バンド【名曲ベストテン】はこちら

入門用にザ・バンドのアルバムを最初に聴くなら、『グレイテスト・ヒッツ』がお薦め。今回選んだ10曲もすべて収録されています。

(by goro)