【80年代ロックの快楽】
Lou Reed – Romeo Had Juliette
Lou Reed – Romeo Had Juliette
1989年発表、19作目のアルバム『ニュー・ヨーク(New York)』のオープニング・トラック。
かつてのヴェルヴェット・アンダーグラウンドの盟友、ジョン・ケイルとモーリン・タッカーが参加し、彼らのホーム・グラウンド、ニュー・ヨークを歌ったアルバムだ。
ルー・リードの、語りと歌の中間のようなヴォーカル、ソリッドなギター、極めてシンプルなサウンド、これだけでアルバムは最後まで続く。
ヴェルヴェット・アンダーグラウンドに近いと言えばそうだけど、でもここには陰鬱さはまったくないし、むしろポジティヴなエネルギーに満ちている。
最初こそ、一本調子で退屈なアルバムに聴こえなくもないけど、何度か聴いているうちにそこここにメロディーが溢れていることに気づくし、少人数で撮ったモノクロ映画のような滋味あふれるカッコ良さに、ずっと聴いていられると思うようになってくる。
まるで初期のボブ・ディランのアコースティック・アルバムのような、聴けば聴くほど、噛めば噛むほど、味が染みだしてくるようなアルバムだ。
代表作の名盤2nd『トランスフォーマー』は楽曲の素晴らしさもさることながら、デヴィッド・ボウイのプロデュースによって、聴きやすく、変化に富んだ完成度の高い作品に仕上がっているが、逆にこのまったく商業主義的でないのに妙に味わい深いアルバムこそ、むしろルー・リードならではの本領が発揮された傑作と言えるだろう。