ニューヨーク市ブルックリン出身のルー・リードは、アンディ・ウォーホルによってプロデュースされたバンド、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの中心人物として、1967年にデビューした。
ビートルズがロック史上最高のアルバムと賞賛された『サージェント・ペパーズ』を発表したのとほぼ同時期に、ルー・リードが全曲を書いた『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコ』で、ドラッグやSMや暴力や同性愛や狂気を歌い、ロック界に新たな地下フロアを創設した。その意味でルー・リードは、すべてのオルタナティヴ・ロックの父であると言える。
都市とそこに生きる人々の暗部を見つめる詩人であり、音楽的にも常に実験的なアプローチをしながらも、芯にあるロックンロールへの指向はブレない。
独特の語りかけるようなヴォーカルと、金属的でノイジーな響きが刺激的で心地良いギター・プレイは、シンプルだからこそどんな音楽よりもリアリティに満ちている。
ルー・リードは2013年10月にこの世を去ったが、もしも彼が存在しなければ、ロック史はもっと健康的で、大衆的で、薄っぺらくて、ウソ臭くて、つまらないものになっていたかもしれない。
以下はわたしがお薦めする、最初に聴くべきルー・リードの至極の名曲5選です。
Walk on the Wild Side
ルー・リードの代名詞と言える、全米16位、全英10位のヒットとなった代表曲。
「おネエでもおナベでも、売春婦でもヤリマンでも、マトモな生き方でなくても、なんだっていいじゃないか。ヤバい道を歩いて生きていくのも悪くない」と歌った名曲だ。
Satellite of Love
デヴィッド・ボウイとミック・ロンソンがプロデュースしたソロ第2作、名盤『トランスフォーマー(Transformer)』収録曲。
男がテレビで衛星打ち上げのニュースを見ながら、浮気な彼女のことを思い出して嫉妬の炎を燃やすという歌。ボウイはコーラスにも参加している。
Perfect Day
『トランスフォーマー』収録の名曲。「恋人と公園を散歩し、サングリアを飲んで、家路に着く。なんて完璧な一日なんだ」と、シンプルな日常の幸福を噛みしめるような歌詞だが、なぜか「恋人」をヘロインのことと解釈されることが多いらしく、ルー・リード本人はインタビューでそれを尋ねられるも、一笑に付して否定している。
Lady Day
ベルリンを舞台に、富豪の息子と、男あさりが好きなショー・ガールと、麻薬中毒の男の、ホモセクシュアルも含む複雑な三角関係の物語のコンセプト・アルバムである3rd『ベルリン(Berlin)』収録曲。ショー・ガールが安宿で生活しながらバーで歌う日々を描いた曲だ。
Romeo Had Juliette
19作目のアルバム『ニュー・ヨーク(New York)』のオープニング・トラック。
ルー・リードの、語りと歌の中間のようなヴォーカル、ソリッドで生々しい音のギター、シンプルなサウンド、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドへの回帰とも言えるけれども、しかしここには陰鬱さはまったくないし、むしろポジティヴなエネルギーに満ちている。
これぞルー・リードとも言える、モノクロ映画のような滋味あふれるカッコ良さ、聴けば聴くほど、噛めば噛むほど、味が染みだしてくるようなアルバムだ。
選んだ5曲がぶっ続けで聴けるプレイリストを作成しましたので、ご利用ください。
♪プレイリスト⇒ はじめてのルー・リード【必聴名曲5選】はこちら
入門用にルー・リードのアルバムを最初に聴くなら、やっぱり名盤『トランスフォーマー(Transformer)』がお薦め。たぶん、ベスト盤よりもこっちのほうが聴きやすいと思います。
(by goro)