ウェディング・プレゼント／ダリアンス（1991）

英国リーズで結成されたウェディング・プレゼントは、1985年にデビューした。

ややこしい恋愛模様を描く歌詞と、内向的なモゴモゴとしたヴォーカルに、轟音ギターを高速カッティングする根暗パンク君みたいな音楽性は、当時の社交性ゼロでこの世の側溝で生きてるようなわたしにはなんだかとてもしっくりくるバンドだった。

92年の来日時は名古屋のクアトロにも観に行った。友達のような気がしていたのかもしれない。
ヴォーカル&ギターのデイヴィッド・ルイス・ゲッジの高速カッティングは、1曲ごとに大根が1本おろせるのではと思わせるほど、根暗のわりにはかなりアグレッシヴなものだった。

この「ダリアンス」は彼らにとって最も売れた3rdアルバム『シーモンスターズ』（全英13位）のオープニングを飾る、暗い曲だ。
まるでラヴェルの「ボレロ」みたいに、曲全体がひとつのクレッシェンドになっている。

暗く静かに始まり、徐々に盛り上がって行き、後半はもう轟音ギターにかき消されてヴォーカルがほとんど聴こえない。
そしていきなり、果てたように終わる。こう言っちゃなんだけれど、まるでマスターベーションを見せられているような気にもなる。

彼らはこのアルバムを、米国アンダーグラウンド・シーンのラスボスみたいな存在だったスティーヴ・アルビニにプロデュースしてもらうべく、はるばる米シカゴを訪れた。

おかげで、さらに彼らの異様さと暗さと破壊力を強調した、まさに「深海の怪物」のような、不気味で力強い、われわれ根暗パンク君たちをうっとりとさせるアルバムを作ったのだった。