キャロル・キング/イット・マイト・アズ・ウェル・レイン・アンティル・セプテンバー(1962)

It Might as Well Rain Until September

【女子ロックの快楽】
Carole King – It Might as Well Rain Until September

西洋音楽史上初の女性作曲家として知られるのは、1098年にドイツで生まれ、多くの宗教曲を書き、修道院長で教会博士、詩人・言語学者でもある「中世ヨーロッパ最大の賢女」と呼ばれたヒルデガルト・フォン・ビンゲンだが、キャロル・キングはそのビンゲン以来の天才女性作曲家ではなかったか。もちろん、商業的な成功という意味ではビンゲン以上だ。

と、大げさなことも言いたくなるぐらいの偉大なソングライターであり、シンガーである。

1958年、16歳でデビューしたキャロルは、シングルを数枚出すもののヒットには恵まれず、17歳で結婚した夫の作詞家ジェリー・ゴフィンとのコンビで作曲に専念する。
するとすぐにシュレルズ、ボヴィー・ビー、リトル・エヴァなどに提供した曲が全米1位の大ヒットを連発し、10代ですでに売れ子作曲家となった。

この曲はキャロルが20歳のときにボビー・ヴィーのために書いた曲だったが、契約していた音楽出版社の社長が彼女が歌ったデモテープを聴いて惚れこみ、そのデモをそのままシングルレコードにしたのがこれである(だから音があまり良くない)。
そしてこのレコードが全米22位、全英3位と、キャロルにとって60年代に自分で歌った唯一のヒットとなった。ロック史上に残る名盤『つづれおり』が世界的なモンスター・セールスとなるのは、その9年後のことである。

わたしはこの曲が大好きで、20歳の作品でありながらすでにキャロル・キング節も濃厚に味わえる、彼女の原点のような曲だ。活発で可愛らしいだけでなく、しっかりと自分の芯を持った女子を思わせる力強く個性的な歌声もまた素晴らしい。

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