【パワー・ポップの快楽】
Raspberries – Go All The Way
Raspberries – Go All The Way
米オハイオ州出身のラズベリーズは、1972年にデビューしたバンドだ。この曲は彼らの2ndシングルで、全米5位の大ヒットとなった、代表曲だ。
それにしても、なんともクセの強い曲である。
イントロは極端に歪んだパワフルなギターがえらくカッコいい。ところが歌に入ると、別の曲かと思うほど極端に甘ったるいものになる。
ヴォーカルはエリック・カルメンという、後にシンガー・ソングライターとして成功する人だが、イントロの間のシャウトしたりするところなんかはなかなかイカしてるのだけれど、本歌に入るともはやロックの歌い方でもない、ヴィブラートをレロレロと効かせて歌う大甘ムード歌謡みたいなヴォーカルへと変幻する。
情緒が不安定なのかと心配になるほどだ。
しかしまあ、この極端にパワフルなサウンドと極端に甘いメロディという、極端すぎる組み合わせが面白いとも言えるし、気持ち悪いとも言える。初めて聴いたときは、そのあまりの振り幅にクラクラして三半規管がバカになったのかと思うほどだった。
この曲はよくパワー・ポップの代表例として挙げられたりするものの、これが代表例として適当なのかどうかはわたしにはよくわからない。
まあしかし、これほど極端な「パワー」と「ポップ」の両立もなかなかないのは確かではある。