リアル・キング・オブ・ロックンロール 〜ファッツ・ドミノ『スウィングス』(1959)【最強ロック名盤500】#66

ファッツ・ドミノ・スウィングス

⭐️⭐️⭐️⭐️

【最強ロック名盤500】#66
Fats Domino
“Fats Domino Swings: 12,000,000 Records” (1959)

米ルイジアナ州ニューオーリンズ出身のファッツ・ドミノは、ニューオーリンズR&Bのレジェンドだ。そして同時に、チャック・ベリーやリトル・リチャードと同時代に活躍した偉大なロックンロール・オリジネイターのひとりとしても、老若男女、黒人・白人の区別なく愛された。黄人のわたしも彼の音楽を愛している。

温かく深みのある歌声はもちろんのこと、彼の見た目がまたいい。こんなに愛苦しい見た目のロックンローラーは他にいない。見ているだけで心が安らぐ。

マイクスタンドを体の右側に立てて、ちょっと反り返るようにしてカメラ目線で歌う、あの歌い方がまたいい。ピアノなんて全然見てなくて、グローブみたいなでっかい手でパーカッションのように適当に叩いてるだけみたいに見える。そしてあの愛嬌のある笑顔と言ったら。

本作はファッツ・ドミノが1959年12月にリリースした、初めてのベスト・アルバムだ。1949年の「ザ・ファット・マン」から58年までのヒット・シングルが網羅されている。カッコ内はシングルチャートの最高順位だ。

【収録曲】

SIDE A

1 ファット・マン (R&B2位)
2 ブルー・マンデイ (全米5位)
3 ブルーベリー・ヒル (全米2位)
4 再び恋して (全米3位)
5 ゴーイング・トゥ・ザ・リヴァー (全米24位)
6 私の青空 (全米19位)

SIDE B

1 ボ・ウィーヴィル (全米35位)
2 ゴーイン・ホーム (全米30位)
3 プリーズ・ドント・リーヴ・ミー (R&B3位)
4 エイント・ザット・ア・シェイム (全米10位)
5 アイム・ウォーキン (全米4位)
6 ホール・ロッタ・ラヴィン (全米6位)

わたしが一番好きなA3「ブルーベリー・ヒル」は昨日の記事でも取り上げたが、500万枚を超すセールスを記録した大ヒット曲だ。
そしてB4「エイント・ザット・ア・シェイム」は1955年に全米10位のヒットとなり、パット・ブーン、チープ・トリック、ジョン・レノンなど数多くのカバーバージョンが存在し、これもよく知られた代表曲となっている。

B5「アイム・ウォーキン」は1957年のヒット曲だ。ちょうどファッツが車で事故を起こした頃で、彼が歩いているのを見つけたファンに「見てみろよ! ファッツ・ドミノが歩いてるぞ!」と声を掛けられ、「Yeah, I’m walking」と応えたのをきっかけに歌詞が出来ていったという。

ミリオンセラーとなる大ヒット曲を22曲も放ち、6,500万枚以上のレコードを売り、ロックンロールと独創的なニューオーリンズR&Bを世界に広めたファッツ・ドミノは、50年代のロックンロール・オリジネイターの中ではエルヴィス・プレスリーに次ぐ商業的成功を収めた。

圧倒的な人気とセールスにも関わらず、ファッツ・ドミノがロックンロールの代表的アーティストとして真っ先に挙げられることがあまりないのは、彼自身の非常に内気で謙虚な性格のせいでもあると言われている。

エルヴィスは「ファッツ・ドミノに大きな影響を受けた」と語り、ファッツを”The Real King of Rockn’ Roll”と呼んだ。

2005年にハリケーン「カトリーナ」がニューオーリンズに直撃した時に、ニュース番組で「被災地在住のファッツ・ドミノさんが行方不明」と報道されたときはずいぶん心配になったものだった。そしてその後の報道で「無事救助されました」と聞いたときは、嬉しかったなあ。

2017年10月24日に89歳でこの世を去ったが、最後まで彼はニュー・オーリンズの地を離れることはなかった。

これからもずっと、ニュー・オーリンズと言えば、彼の愛らしい笑顔と素晴らしい音楽が想い出され、永久に忘れられることはないだろう。


↓ 1955年に全米10位のヒットとなった「エイント・ザット・ア・シェイム」。

↓ 1956年に全米2位、全英6位の大ヒットとなった「ブルーベリー・ヒル」。

(Goro)

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