ヒストリー・オブ・ロック 1979【パンクが拓いた新たな地平】Greatest 10 Songs

LONDON CALLING [12 inch Analog]

1979

マーガレット・サッチャーが女性初の英国首相に就任し、日本ではインベーターゲームが大流行したこの年、13歳のわたしが喉から手が出るほど欲しかったのは、ソニーから発売されたウォークマンだった。
わたしにとってはドラえもんの秘密道具にも匹敵するような夢の機械であり、時代が急速に変わって未来が近づいてきたワクワクするような空気感を象徴していたのがウォークマンだったのだ。親にさんざんねだったものの、結局買ってもらうことは叶わなかったけれども。

パンク・ムーヴメントが切り拓いた新しいロック・シーンにも、時代が確かに変わったと感じる、清々しくもワクワクする空気感が横溢し、新たなロックの個性的な花々が咲き乱れていた。

結局、パンク・ムーヴメントが遺した功績とは、若者たちにDIY精神を刷り込んだこと、各々の個性を独創性とした音楽を創造すること、そして巨万の富のためではなく熱い魂を音楽に込めることを教えたこと、だったように思う。

既存のロックを否定した、耳慣れないサウンドや、解体されたような音楽も生まれてきたが、その実験精神もまた次の世代が実らせる果実のための重要な養分になった。

以下では、そんな新しい時代の空気を象徴する、1979年の名曲10組10曲を選んでみました。

ザ・クラッシュ/ロンドン・コーリング
The Clash – London Calling

LONDON CALLING [12 inch Analog]

1979年12月に発売された、ロック史上の十指には確実に入る、歴史的名盤のタイトル曲。パンク・バンドとしてスタートしたクラッシュがたった2年ほどでここまで音楽的成長を遂げるとは誰も予想しなかったに違いない。パンク・ムーヴメントがただの徒花ではなく、新たなロックの世界を切り拓いた、歴史的変革だったことを証明したのだ。

「ロンドン・コーリング」の過去記事はこちら

スペシャルズ/ルーディーたちへのメッセージ
The Specials – A Message To You Rudy

The Specials (2002 Remaster)

黒人・白人混合というメンバー構成のスペシャルズは、英国のコヴェントリーという、戦後にジャマイカ人が職を求めて大量移民してきた町で結成された。スカやレゲエが日常的に聴かれていた土地柄がそのままこのグループの音楽性になっている。この曲は彼らの1stアルバムの冒頭を飾る代表曲だ。
スカはそもそもレゲエの前身となった古い音楽だったが、このスペシャルズの登場をきっかけに英国から続々とスカ・グループが登場し、そのシンプルで親しみやすい音楽性に、日本も含めて世界的なブームが興った。

「ルーディたちへのメッセージ」の過去記事はこちら

エルヴィス・コステロ/オリヴァーズ・アーミー
Elvis Costello & The Attractions – Oliver’s Army

エルヴィス・コステロの3rdアルバム『アームド・フォーセス』からのシングルで、全英2位と、彼にとってチャート最高位となった代表曲。天性のポップ・センスとユーモア、王道ロックンロールとニュー・ウェイヴ的な鮮烈さというコステロの持ち味が最大に発揮された名曲だ。

「オリヴァーズ・アーミー」の過去記事はこちら

ザ・プリテンダーズ/恋のブラス・イン・ポケット
Pretenders – Brass in Pocket

全英1位の大ヒットとなったプリテンダーズの大ブレイク曲。サビらしいサビもないのに一度聴いたら忘れられない、独創的な曲だ。クリッシー・ハインドの声も芯の強さと知性を感じさせるような、鮮烈なヴォーカルだった。

「恋のブラス・イン・ポケット」の過去記事はこちら

ザ・キュアー/ボーイズ・ドント・クライ
The Cure – Boys Don’t Cry

ザ・キュアーらの2ndシングル。暗黒系のはしりとも言えるキュアーだが、この当時はまだロバート・スミスはあのメイクもしていないし、ボサボサ頭もしていない。この曲は印象的なギター・リフと、比較的明るい曲調で青春の甘酸っぱいせつなさや焦燥感を感じさせる名曲となっている。わたしはキュアーではこれがいちばん好きだ。

「ボーイズ・ドント・クライ」の過去記事はこちら

ザ・ブームタウン・ラッツ/哀愁のマンデイ
Boomtown Rats – I Don’t Like Mondays

ブームタウン・ラッツは、ボブ・ゲルドフを中心としたアイルランド出身のバンドだ。この曲は1979年1月に米カリフォルニア州サンディエゴで起こった小学校での銃乱射事件を題材にした歌で、全英1位となった彼らの代表曲だ。タイトルは、16歳の犯人が犯行動機として語った「月曜日が嫌いだから」という言葉から来ている。

「哀愁のマンデイ」の過去記事はこちら

スティッフ・リトル・フィンガーズ/サスペクト・ディヴァイス
Stiff little fingers – suspect device

アイルランドのパンク・バンド、スティッフ・リトル・フィンガーズの1stアルバム『インフラマブル・マテリアル』のオープニング・トラック。パンク・バンドのお手本のような、全力投球の直球ど真ん中、ツバが飛んできそうなヴォーカル、ギッザギザのギターの音、アッツアツの、どパンクだ。イントロが始まった瞬間に心を掴まれる。やっぱりわたしはこういうバンドが大好きなのだ。

「サスペクト・ディヴァイス」の過去記事はこちら

ザ・バグルス/ラジオスターの悲劇
Buggles – Video Killed the Radio Star

「ビデオがラジオのスターを殺してしまった」と歌ったこのニュー・ウェイヴ・サウンドによる大ヒット曲は、2年後に開局したMTVによって、ヴィジュアルが成功のカギを握るようになってしまった音楽シーンを予言したものだった。そのMTVで最初に流されたミュージックビデオがこの曲だったというのは笑えないブラックジョークみたいな話だ。

「ラジオスターの悲劇」の過去記事はこちら

パブリック・イメージ・リミテッド/アルバトロス
Public Image Ltd. – Albatross

セックス・ピストルズから脱退したジョン・ライドンが結成した新たなバンド、パブリック・イメージ・リミテッドの2ndアルバム『メタル・ボックス』の冒頭を飾る曲。
誰もが切望していたパンク・ロックとは全く違う、地響きを立てる重いベース、金切り声を上げるギター、地下室に反響する呪詛のようなヴォーカルによる恐るべきサウンドは、「ロックは死んだ」と宣言したライドンが蘇らせた、ロックのゾンビのようだ。

「アルバトロス」の過去記事はこちら

ニール・ヤング&クレイジー・ホース/ヘイ・ヘイ・マイ・マイ(イントゥ・ザ・ブラック)
Neil Young & Crazy Horse – Hey Hey, My My (Into the Black)

パンク・ムーヴメントを支持していたニール・ヤングの、ロック史上最も歪んだ轟音ギターによる代表曲。
1977年に他界したかつてロックンロールの王様だったエルヴィス・プレスリーと、ロックンロールに再び熱い息吹を取り戻したパンク・ムーヴメントの主人公、セックス・ピストルズのジョニー・ロットンというシンボリックな世代交代を描き、「ロックンロールは不滅だ」と歌った曲だ。

「ヘイ・ヘイ・マイ・マイ(イントゥ・ザ・ブラック)」の過去記事はこちら

選んだ10曲がぶっ続けで聴けるYouTubeのプレイリストを作成しましたので、ご利用ください。

♪YouTubeプレイリスト⇒ ヒストリー・オブ・ロック 1979【パンクが拓いた新たな地平】Greatest 10 Songs

また、apple musicのプレイリストとしても作成済みです。
apple musicをご利用の方はこちらのリンクからプレイリストにジャンプできます。

ヒストリー・オブ・ロック 1979【パンクが拓いた新たな地平】Greatest 10 Songs (goromusic.com)

ぜひお楽しみください。

(by goro)

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