名盤100選 20 プライマル・スクリーム『スクリーマデリカ』 (1991)

スクリーマデリカ

ボビー・ギレスピーは今年46歳だそうだ。
マドンナが50歳というのは驚きであるとともに少し尊敬の念を感じるものだが、ボビーの46歳というのは驚きとともに失笑を禁じることができない。
あの遅れてきたロック小僧、誰よりもケンカの弱そうなロケンローラー、不細工なのになぜか雰囲気だけはジム・モリソン、そして世界一マラカスが似合い、泣きながら母親のスカートの裾を引っ張る子供のような無垢な声の持ち主、そんなボビーももはや46歳である。
良かったなあ、ボビー、ここまで来れて。ジーザス&メリー・チェインよりも売れたし。

それにしても変わったバンドだと思う。
バンドというよりは、音楽プロジェクト・チームという感じだ。
プライマル・スクリームの音楽は、そのどこまでがバンドのアイデアで、どこまでがプロデュース・ワークなのか、その境がまったく見えないところに特徴がある。
わたしには8割以上がプロデュース・ワークのようにも思える。
いや、悪口などではない。
われわれの楽しみはは最終的に出来上がった音を聴くことだけなのだから、どのような工程を辿ってそれがつくられようがどうでもいい。たとえバンドがまったく演奏してなかったとしても、そんなことはべつにどうでもいいのだ。そのCDに入ってる音楽が面白ければ、そのCDには価値がある。

彼らはバーズのような、サイケ風味のフォーク・ロックでデビューした。
このときのプライマルはすっごく良かった。
青春まるだしだった。
稚拙な音楽だけど、これが今の僕たちの全力です、というめいっぱいの表現があまりにも美しかった。
今はもう本人たちもあまり振り返りたくない過去なのだろう、ベスト盤にもこの時期の曲は1曲も選ばれていない。
しかし当時はわたしも青春まるだしだったので、気に入った。ものすごく気に入った。

セカンドの『プライマル・スクリーム』で、彼らはローリング・ストーンズになろうとしていた。これはまだ力不足ではあったが、方向性としては結果的にこれが後々まで生きてくる。
そして3枚目が彼らの最高傑作であるこの『スクリーマデリカ』である。
彼らがこだわり続けるローリング・ストーンズ路線の米国南部の音楽の響きと、当時のマンチェスター・ムーヴメントで若者たちが朝まで踊り狂っていたハウス・ミュージックの要素を融合させた斬新な音楽だった。ロックファンが布団の中でヘッドホンで聴いても感動できるダンスミュージックだった。
1977年と並んで史上最も多くのロック名盤が生まれた1991年、英国ではプライマル・スクリームがトップに立った瞬間だった。

今、先月発売されたばかりのニュー・アルバム『ビューティフル・フューチャー』を聴きながらこれを書いてる。フル・アルバムとしては通産9枚目のアルバムとなる。
『スクリーマデリカ』から17年、この間彼らはストーンズ風ロケンロールで世界的に成功を収めたり、エレクトロニック・パンクをとことん追求したり、最近ではカントリーの要素まで取り入れて、また新しい響きのあらびき芸なポップ・ソングを誕生させたりしている。
腕が上がるとつまらなくなるバンド、というのは彼らの場合はあてはまらないようだ。
なぜなら彼らは腕が上がらない。
彼らは新たなアルバムのたびに新たなチャンレンジをしてるようであり、それゆえわれわれは毎回いまだに思いつきのようなあらびき芸を聴かされるハメになる。
だからこそ、プライマル・スクリームだけはいまだに気になるのだ。

記事を書いた人(Goro)

愛知県在住。中学卒業後、無知蒙昧のまま社会にさ迷い出て、底辺職を転々した後、地元の映画館に拾われる。映画館に10年勤めた後、レンタルビデオチェーンのバイヤーを20年勤め、現在は再び底辺職で肉体労働の日々に返り咲く。心に平安が訪れている。生活に不満はなし。音楽にはいろいろと救われている。「映画は映画館で観なきゃダメ派」ではない。

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コメント

  1. ゴロー より:

    アルバム不要論
    新譜はエレクトロニク系じゃないから聴きやすいし、タイトル曲とあと2曲ぐらいは気に入る曲があると思う。相変わらずあらびきだし、ちょっと可愛らしいアレンジだし。

    ていうかプライマルって毎回アイデア勝負なんだからアルバムじゃなくて4曲入りの入魂のEPばっかり出したほうがいいんじゃないかなと思う。

    いやプライマルに限らず、今の時代にアルバムなんて要らないんじゃないかと思いますね。どうせ好きな曲だけ抜き出してデジタル・オーディオで聴いたりするんだから。

    毎年4曲入りEPだけ出して、5年ごとにベスト盤にしてまた売るとかね。
    そっちのほうが内容も充実するし、聴くほうも聴きやすいと思うんだけどなあ。

    ちなみにわたしは今はアルバム単位ではほとんど聴かないですね。新譜も基本的にシングルだけを聴いてます。

  2. フェイクアニ より:

    Unknown
    1991年。米の「ネバー・マインド」と英の「デリカ」。本当に幸福な年。
    世界一のスタジオ・マジックを起こすバンド、プライマル・スクリーム。
    新譜から10位に1曲入ってるけど良かった?久々に買おうかな。