マニック・ストリート・プリーチャーズ【名曲ベストテン】MANIC STREET PREACHERS Greatest 10 Songs

フォーエヴァー・ディレイド(ザ・グレイテスト・ヒッツ)

1991年に音楽雑誌などで「2枚組デビュー・アルバムで全世界で1位を獲って、解散する」と前代未聞の宣言をしてデビューし、本気で言ってるのかと冷笑する記者の前でリッチー・エドワースが自身の腕に「4REAL」とナイフで刻み、18針を縫う大怪我をするという一連の騒動は、わたしはなんなく悪目立ちが過ぎると感じて、当時は応援する気にはなれなかったものだ。
その音楽も、当時流行のオルタナティヴ・ロックとは違う、ハード・ロックとパンクのミックスみたいな王道ロックで、わたしには少し物足りなく思えた。

そしてデビュー・アルバムの結果はイギリスで13位と中途半端な結果となり、結局解散もせず、長文の「解散撤回声明」を出したりと、実にカッコ悪い始末で、メディアでも叩かれたりイジられたりしたものだった。

しかし、彼らが解散しなかったことを彼らのファンはもちろん素直に喜んだ。日本でも熱狂的に迎えられた。

そんなファンに支えられ、彼らはアルバムを発売するたびに内容も成長を遂げ、全英13位(1st)→8位(2nd)→6位(3rd)→2位(4th)とセールスを上げて行き、5枚目のアルバムで見事に全英1位を獲得した。

その悪目立ちな登場の仕方から付いた負のイメージからスタートし、挫折を経験し、さらにはバンドの顔だったリッチー・エドワーズが失踪するという絶望的な状況の中でも解散せず、イメージとは真逆の勤勉さでコツコツと成長を遂げ、同世代のバンドたちが次々と消えていく中で彼らは生き残り、国民的バンドと言われるまでに成長した。
はじめは誇大妄想狂のように思えた「You Love Us」などというフレーズも現実にしてしまった。まるでよくフリの効いた映画のようなサクセス・ストーリーだ。

わたしは知らない間に国民的バンドとなっていた彼らに驚き、あらためて彼らの成長を遂げた作品を聴いて感動し、それまで単なる目立ちたがり屋のクソガキだと思ってて申し訳なかったと、自身の不見識を心中で詫びたのだった。

それ以降わたしはひらりと掌を返したように「セックス・ピストルズ以来の最高のロックンロール・バンド」などと調子のいいことを言って誉めそやすようになったのだった。そんなふうに間違いに気づいたとにきただちに考えと立場を変えるのがわたしの得意技である。

以下は、わたしが愛するマニック・ストリート・プリーチャーズの至極の名曲ベストテンです。

第10位 ファスター(1994)
Faster

テーマや歌詞はリッチーの絶望的な社会観・人生観が炸裂した極度にネガティヴでイデオロギー的でありながら、サウンドはぜい肉をそぎ落とした傑作3rd『ホーリー・バイブル(The Holy Bible)』からのシングル。全英16位のヒットとなった。疾走と焦燥と哄笑のパンク・ロックだ。

第9位 ユア・ラヴ・アローン・イズ・ノット・イナフ(2007)
Your Love Alone Is Not Enough

8thアルバム『センド・アウェイ・ザ・タイガース(Send Away The Tigers)』からのシングルで、日本でも「カーニバル」などのヒットで知られるカーディガンズのニーナ・パーションがヴォーカルで参加して、全英2位の大ヒットとなった。

ポップで大胆なソングライティング、効果的なアレンジはいかにもマニックスらしい。

「ユア・ラヴ・アローン・イズ・ノット・イナフ」の過去記事はこちら

第8位 ジ・エヴァーラスティング(1998)
The Everlasting

初の全英1位に輝き、遂に英国No.1バンドの玉座に就いた5thアルバム『ディス・イズ・マイ・トゥルース・テル・ミー・ユアーズ(This Is My Truth Tell Me Yours)』からのシングルで、全英11位のヒットとなった。

壮大なバラードが2曲連続で並ぶオープニングの1曲目だ。
打ち込みやストリングスの多用には賛否両論あったようだけど、わたしはマニックスのわかりやすくドラマチックな音楽性に合ってると思う。

第7位 リトル・ベイビー・ナッシング(1992)
Little Baby Nothing

1stアルバムからのシングルで、全英29位。ヴォーカルで参加しているのはアメリカの元ポルノ女優、トレイシー・ローズだ。曲のテーマは、女性への性的搾取というハードなものだ。

はじめは話題作りのための色物企画かと思ったけれども、曲が良すぎたのでそうならずに済んだ。トレイシーの声もうまくハマっている。

「リトル・ベイビー・ナッシング」の過去記事はこちら

第6位 インターナショナル・ブルー(2017)
International Blue

13枚目のアルバムで、現時点では最新アルバムとなる『レジスタンス・イズ・フュータイル(Resistance Is Futile)』の先行シングル。アルバムは全英2位の大ヒットとなった。

デビューから28年目でなおこれほどの鮮度と情熱をキープしているバンドも滅多にいないだろう。この曲もタイトル通り、突き抜けるような青空にも似た爽快な曲だ。

「インターナショナル・ブルー」の過去記事はこちら

第5位 オータム・ソング(2007)
Autumnsong

『センド・アウェイ・ザ・タイガース(Send Away The Tigers)』からのシングルで、全英10位のヒットとなった。
骨太でキャッチーなフレーズのギターと胸が熱くなるメロディ、ドラマチックなアレンジと、マニックスの真骨頂だ。
歌詞は失踪したバンドメンバー、リッチー・エドワーズに向けられているようにも聴こえる。

「オータム・ソング」の過去記事はこちら

第4位 輝ける世代のために(1998)
If You Tolerate This Your Children Will Be Next

『ディス・イズ・マイ・トゥルース・テル・ミー・ユアーズ』からのシングルで、彼らにとって初の全英1位となった大ヒット曲。

タイトルは1930年代のスペイン内戦で、反乱軍のファシストたちによる爆撃によって殺された子供の写真を使用した反ファシズムのポスターに書かれた警告を引用したものだ。意味は「これを容認すれば、次はあなたの子供がこうなります」

「輝ける世代のために」の過去記事はこちら

第3位 ユー・ラヴ・アス(1991)
You Love Us

1stアルバム『ジェネレーション・テロリスト(Generation Terrorists)』の先行シングルで、全英16位。

当時はタイトルを聞いただけで、なんともナルシスティックで傲慢なクソ野郎だなと思ったものだが、わたしも年を重ね「ロックがナルシスティックで傲慢でクソ野郎でなにが悪い」と逆に肯定できるところまで成長したのだった。

当時の彼らは実は「セックス・ピストルズ以来、最高のロックンロールバンド」だったのだけれど、それにやっとわたしが気づいたのは30年後の、昨年の暮れぐらいのことだったのだ。いや申し訳ない。

「ユー・ラヴ・アス」の過去記事はこちら

第2位 享楽都市の孤独(1991)
Motorcycle Emptiness

いかにも玉石混淆に聴こえた(今ではそれも魅力に思えるが)マニックスの1stアルバムの中でも、本物の輝きを放っていた名曲。全英17位。
マニックスを象徴する、まさに彼らのテーマ曲とも言えるような、聴くたびに胸が熱くなる、90年代ロック屈指の名曲だ。PVはなぜか東京や横浜の街で撮影されている。

「享楽都市の孤独」の過去記事はこちら

第1位 ア・デザイン・フォー・ライフ(1996)
A Design for Life

サイドギターと作詞を担当していたリッチー・エドワーズが徐々に精神を病み、遂には失踪するという混乱の中で、3人だけで録音が進められた傑作4thアルバム『エヴリシング・マスト・ゴー(Everything Must Go)』からの最初のシングル。全英2位とそれまでで最大のヒットを記録した。

社会の底辺で社会を支える労働者たちが、その細々とした生活の中でも、自分の仕事や人生に誇りを持って生きている様を描いた、感動的な名曲だ。同じく労働者の端くれのわたしも、聴くたびにグッとくる。歌詞を書いたのはベースのニッキーだ。

「ア・デザイン・フォー・ライフ」の過去記事はこちら

選んだ10曲がぶっ続けで聴けるプレイリストを作成しましたので、ご利用ください。

♪プレイリスト⇒マニック・ストリート・プリーチャーズ【名曲ベストテン】はこちら

入門用にマニック・ストリート・プリーチャーズのアルバムを最初に聴くなら、2002年リリースのベスト盤『フォーエヴァー・ディレイド(Forever Delayed)』がお薦め。最初に聴くべき代表曲はすべて網羅されています。

また2011年にリリースされた38曲入りのシングル集『ナショナル・トレジャーズ(National Treasures)』もお薦めです。

(by goro)