ボブ・ディラン『ブロンド・オン・ブロンド』(1966)【わたしが選ぶ!最強ロック名盤500】#103

Blonde On Blonde (2022 Vinyl) [12 inch Analog]

⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

【最強ロック名盤500】#103
Bob Dylan
“Blond On Blond” (1966)

前作『追憶のハイウェイ61』のジャケットでは天下を獲った殿様みたいな顔だったけど、今回のジャケはもう、すべてを見通す孤高の賢者みたいな顔だ。この最高傑作の誕生にも「然り」としか言わないような。

1966年6月に通算7作目としてリリースされた本作は、ボブ・ディランの最高傑作として挙げられることが多いアルバムだ。そして、ロック史上初の、2枚組LPという形で発売された大作アルバムでもある。

たしかに、前2作も凄い傑作だけれども、まだこの世に生まれたばかりの「フォーク・ロック」というサウンドを試行錯誤している感はある。

しかしこのナッシュヴィル録音のアルバムでは、ディランが理想としていたサウンドがついに実現できたと本人も言い、自ら「音が黄金に輝いている」と評している。だから『ブロンド・オン・ブロンド』なのだ。そう言われるとそんな気がしてくるから不思議なものだ。

当時のテネシー州ナッシュヴィルのミュージシャンにとっては、ニューヨークから来たアーティストなんて異文化の異国人にも等しいぐらいのものだったらしい。その異文化同士が火花を散らしつつも見事に融合して新しい音楽が生まれたのだ。

【オリジナルLP収録曲】

SIDE A

1 雨の日の女
2 プレッジング・マイ・タイム
3 ジョアンナのヴィジョン
4 スーナー・オア・レイター

SIDE B

1 アイ・ウォント・ユー
2 メンフィス・ブルース・アゲイン
3 ヒョウ皮のふちなし帽
4 女の如く

SIDE C

1 我が道を行く
2 時にはアキレスのように
3 アブソリュートリー・スイート・マリー
4 フォース・タイム・アラウンド
5 5人の信者達

SIDE D

1 ローランドの悲しい目の乙女

完成度が高く、聴きやすいサウンドなので、ディランを初めて聴く人にも薦めやすいアルバム、と思っていたけれども、よく考えてみると1曲目がいきなり「雨の日の女」というのもなかなかハードルが高いのかもしれない。ちなみにこの曲は当時、「わけがわからない歌詞で、気違いじみている」という理由で、放送禁止となった。ただのユーモラスな歌で、そんな大層なものじゃないと思うのだけど。

ディランの代表曲のひとつ、B4「女の如く」は、万人に薦められる名曲だ。
他にもB1「アイ・ウォント・ユー」、B2「メンフィス・ブルース・アゲイン」、A4「スーナー・オア・レイター」など、これまでになく親しみやすいメロディの名曲が多いのが特長だ。

D1「ローランドの悲しい目の乙女」は、D面に1曲だけ収録された、11分に及ぶ大曲である。しかしこの長さでも聴いていてなぜか飽きない、心癒されるメロディの名曲だ。

ディランが試行錯誤してきた「フォーク・ロック」は、ここで一旦完成を見たと言えるだろう。

前作のようなグイグイ来る「圧」もないし、ずっと何時間も聴いていられる。音にもメロディにも、暖かさを感じる。

25歳でこんな素晴らしいアルバムを作るって、いったいどんな気分なんだろうな。

↓ シングルカットされた「女の如く」。全米33位と大ヒットとはならなかったが、後に多くのカバーを生み、ディランの代表曲のひとつとなった。

↓ アルバムからの最初のシングルカットだったが、全米119位とまったく振るわなかった「スーナー・オア・レイター」。なぜなのかわからない。わたしは大好きな曲だ。

(Goro)

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