【ディランのアルバム全部聴いてみた】『ナッシュヴィル・スカイライン』(1969)

NASHVILLE SKYLINE [12 inch Analog]

【ディランのアルバム全部聴いてみた 10枚目】
“Nashville Skyline”

今回のジャケットは「やあ、こんにちは。僕、カントリー始めました。よろしくね」の顔だな。

前2作『ブロンド・オン・ブロンド』『ジョン・ウェズリー・ハーディング』でカントリー方面にじわりじわりとにじり寄って来ていたディランが、ついに全篇カントリーのアルバムを作った。

その本気度は、あの独特のしゃがれ声ではなく、きれいな艶のある声で歌っていることでもわかる。ディランは「タバコをやめたら声が変わった」などとのたまっていたそうだが、カントリーに合った歌いかたにするために猛練習したのはあきらかだ。ボブは照れ屋さんなのだ。

シングル「レイ・レディ・レイ」のヒットや《ジョニー・キャッシュ・ショー》への出演もプロモーションになり、全米3位、全英1位の大ヒットアルバムとなったが、しかし昔から日本ではこのアルバムの良い評価をわたしは見たことがない。

2010年にシンコー・ミュージックから発行された『クロスビート・ディスク・ガイド』ですら「ディランがついに本格的なカントリー・サウンドに挑んだ問題作」と書かれている。
カントリー・サウンドに挑んだだけでいったいなにが「問題」なのかさっぱりわからないけれど、昔からこういう評価しか読んだことがない。

アルバムはいきなりジョニー・キャッシュとのデュエットで始まる。ついにカントリーの大物と直接対決した、緊張感漂うコラボであるが、実はジョニー・キャッシュがたまたま同じスタジオを使っていたため、じゃあセッションでもしましょうかとなって録音したものなのだそうだ。このほかにも何曲か2人で録音していて、それらは後のブートレッグ・シリーズに収録された。

全米7位のヒットを記録した「レイ・レディ・レイ」もすごくいいし、他にも「アイ・スリュー・イット・オール・アウェイ」や「 ワン・モア・ナイト」「嘘だと言っておくれ(Tell Me That It Isn’t True)」など、曲も粒ぞろいだ。10曲で27分という潔さも嬉しい。

ディラン27歳、全曲オリジナルの画期的なカントリー・ロック・アルバムだ。

↓ 「レイ・レディ・レイ(Lay Lady Lay)」

↓ 「嘘だと言っておくれ(Tell Me That It Isn’t True)」

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