No.091 レディオヘッド/クリープ (1993)

Pablo Honey
≪オールタイム・グレイテスト・ソング 500≫ その91
Radiohead  Creep

わたしは過去にニートや引きこもりだったことはないけど、なぜかそっち側の世界の人間のような気がしてならない。
自分だってひとつ間違えばそうだったかもしれないという気もするし、いっぱしの社会人やってるように見せかけているけど、未だにこれが自分の本来の姿なのかどうかよくわからない。

たったの15歳で社会に飛び出してしまったわたしは、自分の居場所がその社会のどこかにあるなんてとても思えなかった。
社会というものは、よそよそしくて、寛容なふりはしているけど実は心の底では厳しい目で見ていて、何を考えているのかわからない人たちの世界だった。
わたしはそんな彼らとどう接すればいいのかわからず、ついこのあいだまで天真爛漫に学校で走り回っていた少年は次第に無口になっていった。

レディオヘッドの音楽はそんな精神的引きこもりのためのサウンドトラックみたいだと思って聴いていた。
この「クリープ」はそんなレディオヘッドの原点と言える。

僕はただのキモい、クズみたいなやつだ
ここは僕なんかがいちゃいけない世界なのかもしれない
完璧なカラダ、完璧な精神がほしい
いてもいなくてもいいような、どうでもいい存在なんかでいたくない

(written by Radiohead, Albert Hammond, Mike Hazlewood)

「クリープ」は衝撃的だった。
劣等感にまみれて途方に暮れた少年が何かわけのわからない凶器を手にしたような音楽だった。
当時わたしはもういい大人だったくせに、心の中につねに隠れているトラウマみたいな15歳部分が激しく反応してしまった。
彼らの音楽を聴いていると、自分ははた目にもしっかりと社会の中に居場所を持ったけど、しかしそれは終わることのない仮の姿のように思えてくるのだ。
本当は15歳の頃から何も変わってないんじゃないかと自問すると、かなりゾッとする。

2003年のサマーソニックに彼らが出演した際、アンコールでこの曲が演奏されると大いに盛り上がり、観客が大合唱している映像を見たことがある。

日本にはわたしと同じように、「クズみたいなやつ」に共感するやつらがたくさんいるなあ、と思ったものだ。
だからわたしは日本が好きだ。

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