No.353 セックス・ピストルズ/プリティ・ヴェイカント (1977)

Never Mind the Bollocks
≪オールタイム・グレイテスト・ソング 500≫ その353
Sex Pistols – Pretty Vacant

そして舞台はロンドンへ。

ロンドンではハタチそこそこのプリティでヴェイカントなクソガキたちが、ラモーンズの影響やジョニー・サンダースの悪影響を受けた過激なロックバンドで社会を揺るがした。

当時の映像などを見ると彼らは、どこへ行っても眉をひそめられ、罵倒され、警官に睨まれ、追いかけられて暴行を受ける、まるでテロリストみたいな扱いである。

ただのポップミュージックの枠を超えた、不安になるほどのエネルギーを人々は彼らの音楽から感じ取っていたのかもしれない。
音楽がそんな、社会を揺るがすようなパワーを持っていたのは、たぶんそのあたりが最後だ。

しかしわたしは、セックス・ピストルズこそ、ロック史上最もプリティでユーモアのセンスにあふれた、超絶カッコいいポップアートのようなバンドだと思っている。

この「プリティ・ヴェイカント」は1977年7月1日に発売された彼らの3枚目のシングルだ。
この曲はイントロからもうワクワクする。

「おれたちは美しい、おれたちは美しいぼんやりなのさ」と国内盤の歌詞カードにはあるが、この場合のprettyというのは「かなり」とか「けっこう」とかそういう意味でも使われるらしい。
なので「かなりのバカたれ」とか「けっこうなアホ野郎」とかそんな感じに理解するべきなのかもしれない。

ジョン・ライドンはこの「プリティ・ヴェイカント」について、後年こう語っている。
「あれは自己嫌悪の歌なんかじゃない。あの曲のサビで俺が”vacant”って言ってるのは自分の事じゃなくて、自己嫌悪と自己憐憫にまみれて陶酔してるような白痴野郎どもに対する嘲笑、罵倒なんだ」

まあ、歌詞なんて自由に想像して聴けばいいというのがわたしの信条だけれど、一応書いた本人が言うことに関しては頭にとどめておきたい。

さらに彼はこうも語っている。
(セックス・ピストルズのユーモアは見落とされていた?という質問に対して)
「完全に見落とされていた。反抗心を持った気難しくて暗いバンドだと思われていたからな。そうじゃなかったんだ。反抗心しか持ってないアホどもが、自分たちがそうだから勝手にそう受け取ったんだよ」

「究極的にはどの曲も『物事を額面通りに捉えたり固定観念を盲信するな。もっと頭を使って自分なりの確固たる視点を持て』って事を言おうとしてるんだよ」

異議なし、まったくその通り。