いちばん正しいグランジ 〜マッドハニー『良い子にファッジ』(1991)【最強ロック名盤500】#27

Every Good Boy Deserves Fudge [Analog]

⭐️⭐️⭐️

【最強ロック名盤500】#27
Mudhoney
“Every Good Boy Deserves Fudge” (1991)

米ワシントン州シアトル出身で、地元のインディ・レーベル《サブ・ポップ》に所属していたグリーン・リヴァーというバンドがふたつに分裂して出来たのが、マッドハニーとパール・ジャムだった。ぶっちゃけてしまうと、わたしはマッドハニーは大好きだが、パール・ジャムはいまいちピンとこない。

マッドハニーのデビューから1年後に、同レーベルからニルヴァーナがデビューした。マッドハニーとニルヴァーナは大の仲良しで、音楽的にも互いに影響を与え合っていた。

その後にやってきたグランジ・ブームでは、ニルヴァーナとパール・ジャムが大ブレイクし、シアトルとサブ・ポップはその源流として世界的な注目を浴びたが、マッドハニーはずっとマイペースだった。つまり、シアトルのグランジ系バンドのひとつとして注目も浴び、それなりに評価もされたが、ブレイクとは縁がなかった。

でもマッドハニーは、それでよかった気がする。

本人たちはどう思っていたか知らないが、売れてやろうとか、歴史を変えてやろうとか、そんな気負いは彼らからは微塵も感じられない。マッドハニーのフロントマンであるマーク・アームはこう語っている。

「俺たちは別に画期的なことなんてなにもしてはいないよ。これまでなかったものを俺たちが発明したとか、そんなことは少しもないんだから」

彼らには当時の流行も、ロック・シーンもどうでもよかったにちがいない。オリジナリティすらも追求していないのかもしれない。ただ自分たちが好きな、昔からあるパンクやガレージ・ロックを引き継いだだけだったのだろう。

クソやかましい歪んだギター、いっしょに絶叫したくなる歌メロ、無邪気な疾走感、これこそがいちばんカッコよくて正しいグランジの姿だと思う。

本作は1991年7月にリリースされた、マッドハニーの2ndアルバムだ。
邦題の『良い子にファッジ』はよく意味がわからないが、調べてみると”Fudge”という単語には「でっちあげ」「ごまかし」「柔らかくて甘いキャンディ」「F××kの婉曲表現」などの意味があるらしい。確かに本作にはその全部の意味が皮肉とともに含まれているように思える。

マッドハニーのギタリスト、スティーヴ・ターナーはマッドハニーの最高傑作に本作を挙げている。わたしもこのアルバムが一番好きだ。

(Goro)

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする