【映画】『レッド、ホワイト&ブルース』(2003米) ★★★☆☆

レッド、ホワイト & ブルース [DVD]

【音楽映画の快楽】
Red, White and Blues

監督:マイク・フィギス
出演:エリック・クラプトン、ヴァン・モリソン、ジェフ・ベック、ジョージィ・フェイム、トム・ジョーンズ他

マーティン・スコセッシ製作総指揮の『ザ・ブルース・ムーヴィー・プロジェクト』の1作。

今作は、60年代イギリスの若いアーティストたちがブルースに影響を受け、ブリティッシュ・ロックとして世界に広めていく過程を、当時のアーティストたちのインタビューや過去のライヴ映像、そして今作のために集められたミュージシャンたちによるスタジオセッションで構成したドキュメンタリー作品。

インタビューに登場する顔ぶれが渋くて豪華だ。
エリック・クラプトン、ロニー・ドネガン、スティーヴ・ウィンウッド、エリック・バードン、ジョージィ・フェイム、ジョン・メイオール、B.B.キングなどなど。それぞれがブルースとの出会いや想いを熱っぽく語る。

40年代のジャズの話から始まり、スキッフル・ブームをきっかけにイギリスの十代の若者たちがギターを手にし、マディ・ウォーターズやビッグ・ビル・ブルーンジー、ロゼッタ・サープなどにも影響を受けてブルースを演奏するようになったと話す。

イギリス人ミュージシャンたちがアメリカのブルースやロックンロールと出会い、実際にアメリカのアーティストたちと会ったり共演した熱っぽい話には、わたしにはまったく理解できないような技術的な話がポンポン飛び出す。
子供の頃に、大人たちがしているよくわからない話を、わからないくせになぜか興奮して聞いていられた、あんな気分にさせてくれるような内容だった。

スタジオ・ライブでは、ヴァン・モリソン、トム・ジョーンズ、ジェフ・ベックの共演などもある。

ヴァン・モリソンはもちろん最高だが、今回はトム・ジョーンズの声の素晴らしさにビビった。わたしは彼の音楽をほとんど聴いたことがないけれども。
今度じっくり聴いてみよう。

イギリスで50年代に流行したスキッフルの代表的なアーティスト、ロニー・ドネガンも登場する。彼が語るエピソードがまた素敵だった。

「2年前、ヴァン・モリソンとベルファストへスキッフルの演奏旅行へ行った。街に着くとドクター・ジョンが歩いてる。呼ぶと突進して来て、『ロニー・ドネガン! あなたこそおれが音楽を始めたきっかけだ!』と。『僕が、君のきっかけ!?』(笑)」

ドネガンはこのインタビューのときすでに70歳ぐらいだが、若々しくてカッコ良く、ユーモアのある、実に魅力的な男だ。ブリティッシュ・ビートのアーティストたちがみんな憧れたこの伝説の男が動いているところをわたしは初めて見られて、なんだか光栄な気分だった。
この直後に彼は亡くなっているので、もしかするとこれが最後の映像になったのかもしれない。

最後にB.B.キングが言った「英国の若者たちがブルースをやって世界に向けて扉を開いてくれなかったら、われわれは今でも真っ暗闇の中にいただろうね」と語るのが印象的だった。