ヒストリー・オブ・ロック 1967【ヤクとサイケと地下フロア】Greatest 10 Songs

Doors (Reis) (Ogv) [12 inch Analog]

1967

日本にミニスカート・ブームが到来していたこの年、米西海岸ではサンフランシスコを中心に、ベトナム戦争への疑問と徴兵への反発などをきっかけに、既存の社会体制や価値観に背を向け、社会をドロップアウトしたヒッピーと呼ばれる若者たちがコミューンを形成して暮らす、ヒッピー・ムーヴメントが起こっていた。

彼らの「愛と平和と自由」というシンプルな哲学と、彼らの生活に欠かせないマリファナやコカインやLSD(当時はまだ違法ではなかった)などのドラッグ体験はロックにも大きな影響を与え、その幻覚や刺激のイメージを音楽で表現しようとしたものがサイケデリック・ロックとっなった。

サイケデリック・ロックの流行は、実験的なサウンドを競い合い、それまでのポップソングの概念を破壊したことで、ロックはまた新たな次元を獲得した。
実験的な発想から、コンセプト・アルバムやアート・ロックが生まれ、さらにはプログレッシヴ・ロックの源流ともなった。

そして東海岸のニューヨークでは、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの登場によってロック・シーンに新たに地下フロアが生まれた。よりダークで頽廃的な表現や、ノイジーで強刺激の音世界も追求する、オルタナティヴ・ロックが誕生した。

6月には世界初の大規模ロック・フェス《モンタレー・ポップ・フェスティヴァル》がカリフォルニア州モンタレーで3日間に渡って開催された。
出演者はジミ・ヘンドリックス、オーティス・レディング、ザ・フー、バーズ、ジャニス・ジョプリン、ジェファーソン・エアプレーンなどの豪華メンバーで、このときの演奏のいくつかは伝説化し、ライヴ・アルバムや映像作品としてリリースされた。このフェスティヴァルの成功によって、続々と大規模なロック・フェスが開催されることとなる。

そんな、ロックが多次元化し、最先端のアートになると同時に一大産業へと育っていった、1967年を象徴する10曲です。

ジミ・ヘンドリックス/紫のけむり
Jimi Hendrix – Purple Haze

Smash Hits

ジミ・ヘンドリックスの登場は、まさにロックの歴史を変えた衝撃的な事件だった。
彼のようにギターを弾く者はいなかったし、その後も彼を超えるギタリストは出ていない。まさに突然変異の怪物であり、ロック・ギターに新たな次元を開いたのだ。

「紫のけむり」の過去記事はこちら

ザ・ドアーズ/ハートに火をつけて
The Doors – Light my fire

The Doors

ドアーズの登場によって、ロックもついに”アート”の仲間入りを果たしたという気がする。
ジム・モリソンの書く文学的な歌詞や従来のロックの枠に囚われないサウンド、狂気や頽廃といったダークな世界観の表現、演劇的なパフォーマンスなど、音楽を超えて最先端のアートになった。この曲は全米1位の大ヒットとなった彼らの代表曲だ。

「ハートに火をつけて」の過去記事はこちら

ジェファーソン・エアプレーン/あなただけを
Jefferson Airplane – Somebody To Love

SURREALISTIC PILLOW

彼らは元々コミューンで生活していた生粋のヒッピーたちであり、当時の西海岸のヒッピー文化、サイケデリック・ロックのシンボルとも言えるグループがこのジェファーソン・エアプレーンだった。
2ndアルバム『シュールレアリスティック・ピロー』から女性ヴォーカルのグレイス・スリックが加入し、マリファナやLSDなどのドラッグに肯定的な内容の歌で注目を浴びた。
アルバムからシングルカットされたこの「あなただけを」が大ヒット(全米5位)し、彼らの代表曲となり、時代の象徴する曲となった。

「あなただけを」の過去記事はこちら

モビー・グレープ/オマハ
Moby Grape – Omaha

Moby Grape

彼らもまたサンフランシスコのバンドだ。商業的には成功しなかったが、当時としては画期的なサウンドで、その後の多くのミュージシャンに影響を与えた。
この曲は1stアルバムからのシングルで、唯一全米トップ100に入った曲(88位)。
うっすらサイケ感もあるガレージ・ロックで、イントロからしてめちゃカッコいい。

ヴァニラ・ファッジ/キープ・ミー・ハンギング・オン
Vanilla Fudge – Keep Me Hangin’ On

ニューヨーク出身のバンド、ヴァニラ・ファッジの1stアルバム『キープ・ミー・ハンギング・オン』のタイトル曲で、全米6位の大ヒットとなった。
アルバムは全曲カバーで、あえてポップな曲を選んでいるように見える。オルガンと強力なリズム隊を中心とした重厚かつ大仰なアレンジに変え、ロックの新たな表現に挑戦した。彼らのサウンドはハード・ロックの源流のひとつとも評価されている。この暑苦しさが堪らない。

アレサ・フランクリン/リスペクト
Aretha Franklin – Respect

I Never Loved a Man the Way I Love You

原曲はオーティス・レディングの作だ。”ソウルの女王”と呼ばれたアレサ・フランクリンのバージョンは彼女にとって初の全米1位と、オリジナル以上の大ヒットとなった。
2021年公開のアレサ・フランクリンの音楽伝記映画『リスペクト』のタイトルにもなった代表曲だ。

「リスペクト」の過去記事はこちら

プロコル・ハルム/青い影
Procol Harum – A Whiter Shade Of Pale

A Whiter Shade Of Pale / A Salty Dog

イギリスのバンド、プロコル・ハルムのデビュー・シングルで、全英1位、全米5位の大ヒットとなった名曲だ。
印象的なオルガンの旋律はJ.S.バッハの「G線状のアリア」と呼ばれる曲のアレンジで、それもあって、彼らは”アート・ロック”と呼ばれた。ソウルフルなヴォーカルがまた素晴らしい。

「青い影」の過去記事はこちら

ピンク・フロイド/ルシファー・サム
Pink Floyd – Lucifer Sam

The Piper at the Gates of Dawn [12 inch Analog]

ピンク・フロイドの1stアルバム『夜明けの口笛吹き』収録曲。デビュー当時はシド・バレットがバンドの中心人物であり、ほとんどの曲を彼が書き、歌っていた。この曲もそうだ。
当時シドはLSDの過剰摂取ですでに正常な状態ではなかったそうだが、そんな彼が生みだしたこの異様な音楽こそが、サイケデリック・ロックのガチ中のガチと言えるだろう。

ピンク・フロイド【名曲ベストテン】はこちら

ザ・ビートルズ/ア・デイ・イン・ザ・ライフ
The Beatles – A Day In The Life

SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND [LP] (PICTURE DISC, 2017 STEREO MIX) [12 inch Analog]

サイケデリック・ロックとコンセプト・アルバムが大流行したこの年の象徴であり金字塔と言えるのがビートルズの歴史的名盤『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』だろう。この曲はそのラストを飾る、ジョン・レノンの最高傑作のひとつに数えられる名曲だ。

『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』の過去記事はこちら

ヴェルヴェット・アンダーグラウンド/僕は待ち人
Velvet Underground – I’m Waiting for the Man

Velvet Underground & Nico [12 inch Analog]

ポップアートの巨人、アンディ・ウォーホルがプロデュースを務めたアルバム。どのようなコンセプトをもって作られ、この耳障りな汚い音がそもそも意図して作られたものかどうかもわからないが、まるで地下室でひっそりと産み落とされた畸形の怪物のようなアルバムだ。
名曲揃いで素晴らしい内容のこのアルバムはまったく売れなかったが、史上初のオルタナティヴ・ロックとしてロックにより自由でより猥雑な地下フロアをオープンした、歴史的名盤として現在も聴き継がれている。かどうかは知らないが、絶対に聴き継がれるべきだろう。

『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコ』の過去記事はこちら

選んだ10曲がぶっ続けで聴けるYouTubeのプレイリストを作成しましたので、ご利用ください。

♪YouTubeプレイリスト⇒ ヒストリー・オブ・ロック 1967【ヤクとサイケと地下フロア】Greatest 10 Songs

また、apple musicのプレイリストとしても作成済みです。
apple musicをご利用の方はこちらのリンクからプレイリストにジャンプできます。

ヒストリー・オブ・ロック 1967【ヤクとサイケと地下フロア】Greatest 10 Songs (goromusic.com)

ぜひお楽しみください。

(by goro)

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