Mick Jagger with Dave Grohl – Eazy Sleazy
4月13日に突然リリースされたサプライズ・シングルである。ミックとデイヴという意外な組み合わせのニュースに、わたしも一瞬目を疑ったほどだ。
ちょうど1年前の4月にローリング・ストーンズの新曲としてこのコロナ禍真っただ中の世界について歌った「リヴィング・イン・ア・ゴーストタウン」をリリースしたが、この曲もまたコロナ関連だ。
日本よりもずっと早く、ヨーロッパではすでにコロナ・ワクチンの接種が進められているようなのだけれど、しかしワクチンに関する陰謀論などがSNSで拡散され、それを信じて接種を拒否する人が笑い事じゃないぐらいいて、ワクチン接種の妨げになっているという。
その代表的な陰謀論というのが「ビル・ゲイツがワクチン接種の機会を利用してマイクロチップを人々に埋め込もうとしている」という実にアホらしいものである。
ミック・ジャガーは、近しい友人たちがこの根も葉もない陰謀論を信じ始めたことがこの曲の歌詞を書くきっかけになったと説明している。
「比較的分別のあった人でも、ワクチンを打たないと言うんだよね。非理性的だけど、デマを信じてしまっているんだ」と言い、反ワクチンを掲げる陰謀論者たちを「マジでムカつく」と語っている。
デイヴ・グロールへのオファーについてはRolling Stone誌のインタビューで次のように語っている。
「パンデミックから抜け出せるという希望、トンネルの先の光ってコーラスが、すぐに浮かんだ。すごくいいサウンドで、“いま出さなきゃ。3ヶ月後だったり半年後じゃ意味がない”って思ったんだ。本当に素晴らしい人と作りたかった。それで、デイヴに電話し、“興味はあるか?”って訊いてみた。彼は、“ああ、すごく退屈しているんだ! やりたい!”って」
ミュージック・ビデオは、もちろんこのご時世なのでミックとデイヴが別の場所で撮ったものを合わせたものだ。もしかすると一度も逢わずに制作されているのかもしれない。
ミックとデイヴが半分ずつ歌っているのかと思いきや、ヴォーカルはすべてミックが(懐かしいSGのギターを弾きながら)歌い、デイヴはギター、ベース、ドラム、コーラスを兼務している。
まあ、なんのことはない、ひとりバック・バンド状態だ。
さすがはロック界の上皇陛下様だ。
あのフー・ファイターズのデイヴ・グロールを電話一本でバック・バンドに使うなんて、ミック様ぐらいにしかできない芸当だろう。
デイヴは「ミック・ジャガーとこの曲をレコーディングしたことが、俺にとってどれほどの意味があるか言葉にするのは難しい。夢が叶ったなんてもんじゃない」と、Twitterでコメントしている。
なんていいやつなんだろう。
そう、昔から本当にすごくいいやつだったんだよな、デイヴは。
なんとなくわたしの夢も叶ったような嬉しい気分だ。
ニルヴァーナ~フー・ファイターズで培ってきたパワフルなデイヴ・グロールのサウンドに、御年77歳・喜寿のミック・ジャガーがまったく負けていないのはさすがだ。枯れたところなど微塵も感じさせない。
超人としか言いようがない。