“Blizzard of Ozz” (1980)
アルコールや薬物に溺れすぎて使い物にならなくなったオジー・オズボーンは、1978年にブラック・サバスをクビになった。
そのオジーが再起してソロ名義で1980年に発表した1st『ブリザード・オブ・オズ〜血塗られた英雄伝説』を聴いてみた。
ホラー風のジャケットから、どんなおどろおどろしい、暗くて重くて気味の悪い音楽をやるのかと思ったら、1曲目の「I Don’t Know」でいきなりのけぞった。
殺人鬼のチェーンソーのようなギターのイントロで颯爽と始まったものの、オジーが歌い出したメロディは、まるでビートルズみたいにポップだ。
ていうか、ビートルズである。
クワイエット・ライオットという当時はまったく売れていないバンドから引き抜いた天才ギタリスト、ランディ・ローズの天空駆け巡るような凶暴かつ麗しい奔放なギターでかろうじてハード・ロックの体裁はしているものの、中身はほぼビートルズだ。3曲目のバラードもまたビートルズだし、その後もそこかしこにビートルズが見え隠れする。
デビュー・シングルにもなった「クレイジー・トレイン」だけはわたしも以前から知っている。この曲のハード・ロックとポップの融合みたいな独特な世界がわたしはとても好きだったが、アルバム全体がこれほどポップだとは、これほどビートルズだとは予想していなかった。だってこんな怖そうなジャケだし。
オジーと40年以上連れ添っている妻のシャロンが「結婚して以来、夫がビートルズを聴かなかった日は1日もないわ」と証言するように。オジーはビートルズの熱狂的なファンなのだ。その影響と愛が色濃く滲み出たデビュー・アルバムだ。
そもそもオジーの歌声も、ハード・ロックらしからぬ、優しくてちょっと弱々しいぐらいの声だ。
一歩間違えばただのポップ・アルバムになりかねないところを救っているのが、ランディ・ローズのギターだ。大胆かつ繊細、ときには重厚に、時には軽やかに、時には鋭く、時には甘く、オジーのわがままな世界観の音楽に必要なすべてを持ち合わせている凄腕である。もちろんオジーがこのアルバムの主役には違いないのだが、しかし2回目からはどうしてもギターの方に耳がいってしまう。わたしは彼のギターから飛び出すオリジナリティ溢れる音やフレーズが面白くてたまらない。
ハード・ロックとブリティッシュ・ポップが心地よい違和感を残したまま融合した傑作だ。わたしはこのアルバムが好きになった。
見た目に似合わず鉄道模型の収集というかわいらしい趣味も持っていたランディ・ローズはしかし、この2年後の1982年3月19日、ツアー中のフロリダで、遊覧飛行の小型飛行機に乗り、オジーが見ていた目の前で墜落し、帰らぬ人となった。まだ25歳だった。
オジーの悲しみは深く、ブラック・サバス時代よりもさらに酷く麻薬とアルコールに溺れ、インタビュアーなどがランディの名前を出しただけでもその場に泣き崩れたという。
(Goro)