Tres Hombres (1973)
そのむさ苦しい見た目のイメージとバンド名から、「そんなジジくさいバンドなんか聴けるか!」と若い頃は思っていたためにスルーし続けてきた米テキサスの3ピースバンド、ZZトップを聴いてみる。1973年発表、全米8位の大ヒットとなった彼らのブレイク作で、名盤と名高い3rd『トレス・オンブレス』である。
これが一聴して気に入ったのである。
これの前に、ディープ・パープルを脱退したギタリストが結成したというバンドの、虹をどうしたとかいうタイトルのアルバムを聴いていて、これがわたしの苦手な、仰々しくて、分厚い音が暑苦しいハード・ロックの典型で、辟易した直後だったせいもある。
本作はそれとは真逆の、極限までシンプルで、3人のタイトな演奏が気持ちのいい、サウナ後の炭酸強めのソーダ水のような、刺激的で爽快な喉ごしのアルバムだ。
テキサス流ブルース・ロックとでもいうべきか、暑くても湿度が低く、カラッとした暑さと吹き抜ける風を感じさせる、そんな風通しの良いサウンドが大いに気に入った。
60年代後半から70年代前半にかけて掃いて捨てるほどいた、暑苦しくて古臭くて退屈でオリジナリティのかけらもない「ブルース至上主義」みたいな白人のブルース・ロック・バンドがわたしは嫌いなのだけれども、このZZトップはブルース・ロックでありながらもそんなのとはひと味もふた味も違う。
特にビリー・ギボンズのギターが面白い。ほとんど加工されていない、極めてシンプルな音なのに、それが様々な表情を見せ、攻撃的でもあれば変態的でもあり、ユーモラスで柔和な表情を見せたかと思えば狂ったように尖りまくったりもする。
特にシングルにもなった「ラ・グランジェ」のギタープレイは凄まじくカッコいい。必聴である。
わたしもZZトップがわかるぐらいにジジイになったってことだなあなどと感慨深く、嬉しく感じたが、よくよく調べてみるとこの当時のZZトップのメンバーは、たったの24歳だったのである。
(Goro)