“The Michael Schenker Group” (1980)
悲しいことや苦しいことがあった日は、ハード・ロックで現実逃避に限る。
パンクだとヘタに共感してしまって、なにもかも社会が悪いのだなどと思いかねないので、ハード・ロックの方がいい。ハード・ロックには共感すべきものなど何ひとつないからだ。
何も心には語りかけてこない、ただのうるさい音楽。
そういうものが必要な時だってあるのだ。
スコーピオンズからUFOに移籍し、78年に脱退したドイツ人ギタリスト、マイケル・シェンカーが率いるグループの1stアルバム『神(帰ってきたフライング・アロウ)』を聴いてみた。
あっ。
この曲は知ってるな。
オープニングを飾る”Armed and Ready”だ。
わたしが10代の頃に、この曲のリフをギターで自慢げに誰かが弾いているのを聴いたことがある。ただし、誰だったかはまったく思い出せない。たしか、憶えておくほどでもないしょうもないやつだったように思う。このリフほ延々繰り返しているだけで、ちっとも先に進まなかった。
マイケル・シェンカーはアメリカではあまり売れなかったが、イギリスではそこそこ人気があった。しかし世界中でいちばん人気があったのが日本だ。なぜかはわからない。『神』という邦題を付けられたぐらいだから、ギターの神様という認識だったのだろう。日本では彼も八百万の神の一人なのだ。
わたしはUFOの『現象 Phenomenon』(1974) というアルバムを数年前に聴いて、随分気に入ったものだ。特にマイケル・シェンカーのぐにゃぐにゃしたギターが面白いと思った。
本作は今回初めて聴いた。派手なギターを弾く人だなあとあらためて思った。相変わらずぐにゃぐにゃしたソロを弾いている。
ギターテクニックをひけらかしてドヤ顔をしてるだけのアルバムだったら嫌だなと思いきや、楽曲が意外と良いし、ヴォーカルもなかなか良い。ゲイリー・バーデンという人らしい。
ハード・ロックとしてはすごくオリジナリティがあるというわけではないものの、最初から最後まで、楽しく聴けるアルバムだ。
(Goro)