永遠のお洒落ロック、デュラン・デュラン『リオ』(1982)【食わず嫌いロック】#30

Rio

Duran Duran
“Rio” (1982)

おっ洒落だなあ。
感嘆するしかない。

この【食わず嫌いロック】のシリーズでこれまでわたしがその克服に挑戦してきた、あんなハード・ロックとかヘヴィメタメルみたいな野蛮な連中なんかとは今回はわけが違う。わたしにとってはより難敵である、お洒落ロックの登場だ。

当時16歳のわたしにとって、デュラン・デュランは80年代ロックの象徴みたいなバンドだった。

MTV映えするルックス、最新の電子楽器や録音技術でキラキラと飾り付けられ、華やかで、軽やかで、スタイリッシュで、いかにも金になりそうなポップなサウンド。

いやあ、嫌いだったなあ。

わたしは80年代のあの独特の、エレポップとか、ニューロマンティックとか、ああいったものが当時から苦手で、聴いてこなかったのだ。

わたしは80年代を、60年代や70年代の音楽を聴いて過ごした。
当時のわたしは、リアルタイムのロックはぜんぶこういうオシャレでスタイリッシュなやつだと思い込んでいた。そして「あんなものはロックでもなんでもない」などと思っていたものだが、向こうに言わせれば「ロックじゃなくて結構」てなもんだろう。

しかしあらためて本作を聴いてみると、70年代には遅々とした進化しかしてこなかったロックが、ここで劇的なまでに変化した、その革命的なサウンドの創造に感嘆してしまう。これに比べたらセックス・ピストルズだってオーソドックスな王道ロックでしかないと思えるほどだ。だから、もはやロックではなくなったのかもしれない、と言うことだってできるのだけれども、そんな、何がロックかなんて、考えてみたらどうだっていいことである。

1982年発表の本作『リオ』はデュラン・デュランの2ndアルバムだ。全英2位、全米6位の大ヒットとなった。ちょうどMTVの開局という彼らにとっての強い追い風も加わり、アルバムからの2曲のシングルヒット「ハングリー・ライク・ザ・ウルフ」(英5位、米3位)、「リオ」(英6位、米14位)がヘビロテとなり、彼らは世界的なブレイクを果たした。日本でもメチャクチャ人気があった。

実はわたしも、数年前に「リオ」という曲をあらためて聴いてみて、とても好きになったのだ。お洒落なだけじゃなく、ずいぶん攻めてる曲なのだなと思った。そしてカッコいい。今回は「ハングリー・ライク・ザ・ウルフ」も同様に好きになった。

彼らの人気を、所詮ルックスだけのアイドル人気だと当時の魯鈍なわたしは勝手に思い込んでいたが、実際には彼らの音楽はそれまでになかった画期的な新しいロックとして、新世代のロック少年少女たちに真剣に聴かれ、愛されていたのだということはずっと後になって気づくことになる。そして今回はあらためてそれを確認できた。その革命的な新しさ、そして完成度の高さに感嘆したのだ。

いくらお洒落と言っても、すでに40年前の音楽である。古臭くてダサく感じてもいいようなものだが、そういう感じもしない。大正時代のモダンボーイやモダンガールたちのファッションが何周回ってもお洒落に見えるように、デュラン・デュランもやはり何周回ってもお洒落に聴こえるのかもしれない。

と言って、じゃあ明日からデュラン・デュランにどっぷりハマるかと言ったら、べつにそうはならないが。

ダサい人生を歩んできたダサいわたしは、永遠のお洒落ロックは眩しすぎる。ちょっと暗いぐらいの、熱くて野蛮でダサいロックの方がやっぱりお似合いなのである。

(Goro)