ジョニー・キャッシュ/パーソナル・ジーザス(2002)

American IV: the Man Comes Around [12 inch Analog]

【21世紀ロックの快楽】
Johnny Cash – Personal Jesus

ジョニー・キャッシュが2002年に発表したアルバム『アメリカン・レコーディングスⅣ』に収録された、デペッシュ・モードのヒット曲のカバーである。

レコーディング当時ジョニー・キャッシュは、70歳だった。
死の1年前のことである。

ジョニー・キャッシュがデペッシュ・モードを歌うというだけでも驚きだったが、そんな驚きをさらに超えた衝撃をこの歌声から受けた。
全盛期から30~40年後の、老いてまたべつの深い魅力を持った彼の声のインパクトに鳥肌が立つ思いだった。

この声の存在感、枯れた味わいの奥深さ、そして決して失われていない滾るような熱量。
「老いて熟した声によるロック」という、新たな音楽の魅力を発見した思いだった。

それまでは、ロックなんて若者がやるべきもので、大年寄りが生活のために続けているロックなんていうものにはあまり興味ももたなかったのだけど、それ以来考えが変わり、老成の中で創造されるロックというものにわたしは興味を持つようになった。

「ロック=若者の音楽」だったのは、前世紀までの話だ。古い考えでしかない。

若者が新しい発想で創造する、聴いたこともないロックに出会うのも楽しみだけれど、老成したアーティストたちが生み出す、深い味わいの完熟ロックやあるいは枯山水のようなロックもまた、新たなロックの境地として楽しみでならない。

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