はじめてのザ・バーズ 名曲10選 10 The Byrds Songs to Listen to First

The Byrds - Greatest Hits

1960年代のアメリカで、わたしが一番好きなバンドがこのザ・バーズだ。

美しく透き通ったコーラスと煌めくようなギターが絡み合い、柔らかな耳あたりでありながらビート感もある独特のバーズ・サウンドは、当時世界を席巻していた英・米の雄、ザ・ビートルズとボブ・ディランの音楽を融合したような音楽だった。

バーズ・サウンドが誕生したと同時に「フォーク・ロック」という概念も生まれ、そこからさらに変幻した「サイケデリック・ロック」を生み、さらには「カントリー・ロック」を創造するなど、ロックの可能性を一気に拡げた、ロック史における最重要バンドのひとつである。

そんな、60年代米国ロックの立役者、ザ・バーズをはじめて聴く方のために、彼らの名曲を10曲に厳選して選んでみました。

#1 ミスター・タンブリン・マン(1965)
Mr. Tambourine Man

Mr. Tambourine Man

彼らの2ndシングルで、ボブ・ディランのカバー。全米・全英ともに1位を獲得し、彼らを大ブレイクさせた代表曲だ。
この透明感あふれる美しいサウンドは、ロック史における最も重要な発明のひとつに数えられていいだろう。

ボブ・ディランのオリジナル・バージョンはピアノとアコギのみのシンプルなフォーク・ソングだが、その発売からたった3週間後にこの斬新すぎるバーズ・バージョンが発表されたのだから、当時のロック・ファンたちも驚いただろうけど、いちばんビビったのは当のボブ・ディランだったのではないか。自分の曲ながら、敗北感さえ味わったのではないだろうか。

しかしこれに刺激を受けたのか、ディランはその2カ月後にフォーク・ロックを代表する名曲「ライク・ア・ローリング・ストーン」を発表する。

このあたりの、ロックが怒涛の勢いで変容・進化していく過程は、ゾクゾクするほどだ。

#2 すっきりしたぜ(1965)
I’ll Feel a Whole Lot Better

Mr. Tambourine Man

初期のバーズのオリジナル曲のほとんどを書いた、ジーン・クラークの作。
スピード感があり、軽快なギターリフを主体としたサウンドはこれぞバーズ式のロックンロール、といった作品だ。

80年代~90年代には英国のネオ・アコ系バンドからプライマル・スクリーム、ティーンエイジ・ファンクラブなどのクリエイション・レーベル系のバンドに影響を与え、米国ではR.E.M.がこのようなサウンドを、アメリカの伝統のひとつとして受け継いだ感があった。

今はどこでだれが受け継いでいるのかよくわからないが、きっとどこかでだれかが受け継いでいるに違いない。

#3 自由の鐘(1965)
Chimes of Freedom

Mr. Tambourine Man

ボブ・ディラン作。ザ・バーズによる数多いディラン・カバーの中でも出色の出来のひとつだ。

ディランには申し訳ないけれど、バーズのカバーで聴いて初めて「こんな良い曲だったのか!」と驚いたのが何曲もある。バーズの数々のカバーによって、ボブ・ディランの音楽性が実にメロディ豊かでポップであることに気づかされたものだった。
難解な歌詞を書くフォーク・シンガーから、稀代のメロディメーカーへと、ディランの印象が変わったものだった。

#4 ターン・ターン・ターン(1965)
Turn! Turn! Turn!

Turn,Turn,Turn

旧約聖書の「伝道の書」の一部に、米国のフォーク歌手ピート・シーガーが曲を付けた作品。

2ndアルバムのタイトル曲であり、シングルとしても全米1位に輝いた大ヒット曲。
「万物はすべて変わっていく」と歌う、当時の急激な時代の変化や、反戦的なメッセージも含んだ曲だ。

美しいギターサウンドと、美しいハーモニーが素晴らしい。何十年聴いていても飽きない。

#5 霧の5次元(1966)
5D (Fifth Dimension)

Fifth Dimension

3rdアルバム『霧の5次元』のタイトル曲。

一瞬、ボブ・ディランの曲かなと思うが、ロジャー・マッギンの作である。もうすっかりディランが乗り移っているかのようだ。

歌詞はアインシュタインの相対性理論を要約したもの、ということだが、よくわからない。わたしにはただのドラッグ・ソングに聴こえる。

#6 霧の8マイル(1966)
Eight Miles High

Fifth Dimension

ジーン・クラーク、ロジャー・マッギン、デヴィッド・クロスビーによる共作。

3rdアルバムのメインとなる2曲になぜ似たような邦題をつけたのかわからないが、どっちがどっちだったかわからなくなるのでやめてほしかった。だいたいどちらも「霧」なんて言葉はそもそもついてないのに。

この「霧の8マイル」はアルバムに先行してリリースされたシングルで、全米14位のヒットとなった。
コルトレーンの影響とも言われるマッギンのギターのフリー・ジャズ風のイントロで始まるこの曲は、歌詞の内容もアシッド・ソング的であり、史上初のサイケデリック・ロックと評価されている。

#7 ミスター・スペースマン(1966)
Mr. Spaceman

Fifth Dimension

ロジャー・マッギン作。
全体的にサイケデリックな指向を見せた3rdで、なぜかホンキー・トンク系のロックンロールが収録されているのも面白い。この2年後に展開されるカントリー・ロックの先鞭をつけたシングルと言えるかもしれない。全米36位。

このMVは発表から2年後に撮られたもののようで、グラム・パーソンズも参加している。

#8 マイ・バック・ページ(1967)
My Back Pages

Younger Than Yesterday [12 inch Analog]

4枚目のアルバム『昨日より若く』はいかにもこの時代らしい、コンセプトアルバムとなっているが、イマイチ地味な印象で、この曲のみが俄然輝きを放っている印象は否めない。ボブ・ディランの作品。

前作ではボブ・ディランのカバーが1曲もなかったことから、久々のディラン回帰で素晴らしいカバーとなった。バーズのディラン・カバーでは「ミスター・タンブリンマン」と並んでこの曲がわたしは好きだ。

アルバムのタイトル『昨日より若く』もこの曲の一節から取られている。
若い頃にありがちな無知で偏狭で凝り固まった考え方をやめて、もっと自由に感じられるようになったことを、「今の僕はあの頃よりもずっと若い」と表現している。

#9 ゴーイング・ノーホエア(1968)
You Ain’t Goin’ Nowhere

Sweetheart of the Rodeo

ザ・バーズの6枚目のアルバム『ロデオの恋人』は、グラム・パーソンズが加入したことによって「カントリー・ロック」という概念が生まれた、ロック史における重要な一枚であり、ザ・バーズの最高傑作とされる名盤だ。

この曲もボブ・ディラン作ではあるが、カントリーとロックを融合させたサウンドで、新たな地平を切り拓いた。

#10 ヒッコリー・ウインド(1968)
Hickory Wind

Sweetheart of the Rodeo

最後は『ロデオの恋人』から、シンプルだが美しいカントリー・ワルツで締め括ろう。
グラム・パーソンズの作で、リード・ヴォーカルもパーソンズだ。

グラム・パーソンズのヴォーカルについては様々な意見もあると思うが、ぜひ優しい気持ちで、これもひとつの「味」だと思って聴いてあげて欲しい。

この歌はいろいろな樹木のことを歌っている。木のことを歌ったロックナンバーなんてなかなかないので、素敵だと思う。
せつないような、懐かしいような、樹木の葉をやさしく揺らす、爽やかな風のような名曲だ。

『ロデオの恋人』発表後、方向性の対立でグラム・パーソンズとクリス・ヒルマンが抜け、バーズのオリジナル・メンバーはロジャー・マッギンひとりになってしまった。
デビューからわずか3年後のことだ。

たった3年のあいだにアルバムを6枚発表し、フォーク・ロックとサイケデリック・ロックとカントリー・ロックを創造し、疾風のように駆け抜けてきたバーズだったが、その後の作品は方向性を見失って失速してしまった感が否めない。

彼らのアルバムでのお薦めは1st『ミスター・タンブリンマン』、2nd『ターン・ターン・ターン』、3rd『霧の5次元』 6th『ロデオの恋人』ということになるだろう。特に『ミスター・タンブリンマン』と『ロデオ』は必聴だ。

もちろん入門用には、ベストアルバムもお薦めだ。

エッセンシャル・バーズ

記事を書いた人(Goro)

愛知県在住。中学卒業後、無知蒙昧のまま社会にさ迷い出て、底辺職を転々した後、地元の映画館に拾われる。映画館に10年勤めた後、レンタルビデオチェーンのバイヤーを20年勤め、現在は再び底辺職で肉体労働の日々に返り咲く。心に平安が訪れている。生活に不満はなし。音楽にはいろいろと救われている。「映画は映画館で観なきゃダメ派」ではない。

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